社長をだせ!


副題:実録クレームとの死闘
2003年8月刊  著者:川田 茂雄  出版社:宝島社  価格:\1,470(税込)  239P


社長をだせ!―実録クレームとの死闘


かつて顧客とのトラブル対応をしたことがあります。罵声を浴びせられ、「明日の朝までにこういう資料を作って報告しろ」等と次から次に新しい要求が飛び出しますが、こちらは「ご迷惑をおかけした」という負い目があるので何も言い返せません。まるで打たれっぱなしのサンドバッグ状態。とうとう電話が鳴るだけで動悸がするようになり、後々まで軽いトラウマが残りました。


本書を開くと第一章からいきなり「トンデモない」クレームの実例が登場するので、心の古傷から流血しそうになりました。しかし、著者は決して逃げません。そして「クレームというものは逃げれば逃げるほど追いかけてくるのです」「自分で解決できなかったクレームは1件もありません」と言い切ります。
カッコいい!


しかも、どんなクレームであっても著者の会社が作る製品の品質向上に繋げていく、という心構えで対応しています。「クレームは企業にとって大変有効なものですから大切に扱わなければならない」と断言。
カッコ良過ぎる!!


そんな著者も、決して心臓に毛が生えているわけではありません。「何年やっても『クレームです!』と言われるたびに、私はこのように緊張し、みるみる手のひらが汗ばんできます」という普通の人間です。
読みやすい文章で、あっという間に読めます。ふつうの人はドキドキ・ワクワクしながら読めるでしょう。けっこうオススメです。
ただし、本書は、次のような人は読んではいけません。


 (1)クレームやいじめで痛めつけられた経験を持ち、「傷」がまだ癒えない人
    本書を最後まで読み通せたのですから、私のトラウマはもう大丈夫と
   思われます。しかし、まだ不安やストレスのある人は、本書の生々しい
   実例を無理して読まない方が良いでしょう。


 (2)クレーム処理のノウハウを知りたい人
    本書は実用書ではありません。著者の20余年のクレーム処理人生で
   出会った「トンデモない面々」のノンフィクションです。クレーム処理
   の「心構え」を学ぶつもりの読者は得るものがありますが、具体的ノウ
   ハウやマニュアル本を期待する人は肩透かしを食うでしょう。


 (3)荒々しい言葉のやり取りを好まない人
   暴力団まがいのクレーマーが登場して荒々しい言葉が飛び交う場面もあ
  ります。また、著者自身も時には「大口叩くのもいい加減にしとけよ。こ
  こは右翼でもヤクザでもしょっちゅう相手にしてるんだからさ、あんたな
  んかになめられてたまるか!」とすごむことがあります。