内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊

2004年7月刊  著者:城 繁幸
出版社:光文社ペーパーバックス  価格:\1,000(税込)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

タイトルを見ると「富士通成果主義の両方を告発する」という印象を受けるが、本書には「富士通の告発」と「富士通の失敗をふまえた『成果主義』の改善案」が書かれている。
著者は富士通の人事部で成果主義の運営の当事者だった。
今は会社を去った著者だが、人事部と経営者への恨みは深く、最近も文藝春秋2004年11月号に富士通会長の経営責任を問う公開質問状を執筆していた。
自分の勤めていた会社をこんなにまで憎むのは異常と思うが、富士通への恨みつらみを書き込むインターネット上のサイトがあり、元社員・現社員の書き込みでにぎわっていると聞くと、やはり問題の多い会社なのかもしれない。


表紙の通り「無能なトップ、暗躍する人事部、社内に渦巻く不満と嫉妬」が余すところなく書かれているので、他人事として読むにはストレス解消に役立つ本だ。
しかし、成果主義の批判を期待していた読者は、むしろ不快になるだろう。
著者は成果主義そのものを否定しているわけではない。
従来の日本型雇用制度(終身雇用、年功序列)は、右肩上がりの業績を永遠に続けることを前提にしており、高度成長期の日本にしか適用できない時代遅れの制度、とバッサリ切って捨てる。更に、バブル期に大量に社員を雇用した会社は、社員の年代別構成比率がピラミッド型ではなく葱坊主型をしているため、このまま年功序列を続けるのは不可能、とも言う。
むしろ富士通の失敗を教訓に、成果主義を日本に適した形で運営するための提言に1章を割いている。不快に感じる人は、この章は読まない方が良い。


ところで、光文社ペーパーバックス というのを始めて手にしたが、不思議なつくりをした本だ。
横書きはまあいいとして、内表紙の次にいきなり奥書が登場する。おいおい、奥書は巻末に書くものだろう。
なにより困るのは、本文の随所に英語が乱入することだ。光文社は「英語をそのまま取り入れた日本語表記の未来型」と自信たっぶりだが、ともかく読みづらい。
少し引用してみよう。

    という議論は虚しい in vain。
    地位 post や身分 position が保障されているからといって、
    『未来』に希望さえあれば、多少のことなら我慢 patience できる。
    つらい労働 severe work だって、人間はちゃんとこなす。

こんな中途半端な英単語挿入は、英語の勉強をしたい人でも願い下げ。変な日本語改革はやめてもらいたい。