メール道

メール道

2004年5月刊  著者:久米 信行  出版社:NTT出版  価格:\1,680(税込)


メールのノウハウを書いた本は山ほどあれど、「道を説く」なんていう切り口にお目にかかったことがない。
たかだかメールごときに「道」などあるはずない、などという先入観を持つ人は、そもそも本書を手に取ることもないと思うが、著者自身も以前は筆文字のお礼状を出すことが心を尽くすことだと信じていた。
そんな「手紙道」出身者である著者が毎日一通のメールを出す“メール道修行”に励み、8年間続けた修行の果てに到達した境地から吐き出される言々区々には、凡百のノウハウ本には無い深い味わいがある。


茶道の心は「おもてなしの心」、武道の心は「心技体」、と聞いたことがあるが、メール道における久米氏の心構えは茶道や武道にも通じるものがあるように思う。著者は言う。「無欲の大欲」「無作為の作為」。
極めつけは挨拶文の書き方。著者は「こんにちは○○です」「いつもありがとうございます。○○会社の□□です」などというお決まりの挨拶を「こ」や「あ」と入れれば変換できるように単語登録をしている。こうした一種の“手抜き”はメールに心が込もらなくなる一因となるので「メール道」の心からすると好ましいことではない。
では、どうしたら良いのか。
なんと著者は、単語変換と同時に表示される挨拶文を「目で追って、心で復唱」するのだ。曰く「もちろん、その心の声が、相手に直接届くはずはありません。それでも、心で言葉にするとこで、親しみの心や、感謝の心が伝わると信じております」


「7つのご利益」「23の心得」など著者の経験からにじみ出る信念がビンビン伝わってくる。
幸い、メール道に家元制度は無い。自分自身のメール道を極めるため、私も修行を開始したくなった。