あなたの会社にお金が残る

あなたの会社にお金が残る 裏帳簿のススメ

副題:裏帳簿のススメ


2004年7月刊  著者:岡本 吏郎  出版社:アスコム  価格:\1,575(税込)


世に言う会計書は税務署と銀行のために書かされるもので、実際の経営には百害あって一利なし、とのっけから大音声で語られる。経営者の苦労も解さない税務署に対する著者の怒りは大きい。


その税務署にかつて戦いを挑んだ男がおり、実話に基づく高杉良の小説『不撓不屈』を著者は紹介している。

不撓不屈

事あるごとに税務当局と理論闘争を続けたこの税理士は、昭和37年に税務当局を相手に訴訟を起こす。メンツをつぶされた当局は彼が顧問をしている中小企業に脅迫的な税務調査を続け、顧問契約解消を迫る。泥沼の闘争の果てに、昭和45年やっと裁判で勝利を勝ち取った。
400ページ以上もある巨編は読み応えがあり、勝った主人公はカッコいいが、その代償は大きかった。彼が顧問をしていた旅館や商店は、年末の忙しい時に税務署から嫌がらせのような調査を受け、税務署に目を付けられれば倒産するのではないか、という恐慌に襲われる。顧問契約を解消する店主も多かった。


岡本氏も税務署に対する怒りは大きいが、『不撓不屈』の主人公と違って税務署と戦うことを勧めはしない。それよりも、経営に真に役立つ帳簿を作るべき、というのが本書で語られる内容だ。もちろん「真に役立つ帳簿」は決して非合法ではない。だが『真に役立つ帳簿のススメ』ではインパクトが弱い。編集者が命名したのだろうか、『裏帳簿のススメ』というタイトルになった。


害のある税務署の基準とは、例えば“20年”という「資産の償却年数」である。最近の飲食店は5年もすれば客が逓減傾向になり、店舗のリニューアルを余儀なくされるので、税務署の基準では実態に合わない。5年経てば実質ゼロになってしまう資産を20年間資産として扱うような決算書では、何より経営者が損益の実態を把握できなくなる。「裏帳簿」ではこのように計算する……というような指南が本書で展開される。


私自身はラーメン屋を営んでいるわけでもなく、経理部所属でもないので、後半になるにしたがってだんだん付いていけなくなったが、経営の最前線に立っている人にとっては非常に参考になりそうである。