笑わせる技術


副題:なぜ、あの人は人気があるのか
2005年3月刊  著者:中島 孝志  出版社:広済堂出版   \1,365(税込)  205P


笑わせる!技術―なぜ、あの人は人気があるのか


いま、ビジネスでいちばんウケるのは「人を笑わせる!」ことができる人! というのは、本書の第1章のタイトルです。事実、ニューヨークやロサンゼルスの電話帳には24時間ジョークを流しているダイヤルサービスが載っているそうです。気の利いたジョークを挨拶の冒頭に入れるために、アメリカのビジネスマンは、ここに電話をしてネタを仕入れるとのこと。
日本でも「あんた、おもしろいねぇ」と言われる人は順風満帆の人生間違いなし、と著者は言っています。
ちょっと、言い切りすぎじゃないのかなぁ、という気もしますが、「ズバリ言って、ビジネス人生というものはどれだけ『えこひいき』してもらえるかで決まるから」とたたみかけられると、何となくそんな気もしてきました。
でも、サンマちゃんや紳介のように小さい頃から「おもしろい」ことに磨きをかけてきた関西人と違い、ふつうの日本人はお笑いエリートに勝負を挑んではいけません。著者の指摘する、次の5つのツボを抑えることからはじめましょう。
  (1) 場が和むか?
  (2) 膝を乗り出してくるか?
  (3) ウィットとユーモアに富み、なによりわかりやすいか?
  (4) 話に花が咲くか、言い換えれば、発展性、成長性、飛躍性があるか?
  (5) 心を動かされるか?


本書には、このツボを抑えるために、いろいろな成功例が紹介されています。松下幸之助やIBMの椎名元会長の逸話、徳島県鳴門市のドイツ人捕虜収容所で日本初の第九演奏が行われたエピソードまで出てきます。
私が気に入ったのは、ある会社が顧問税理士を採用する際の面接でのできごと。
「1+1はなんですか?」という面接者の質問に、1人目は「それは2に決まっています」と答え、2人目は「バカにするつもりか!」と怒って帰ってしまいました。もちろん不採用です。
採用になった3人目の税理士は「いくらにしたいんですか?」とニヤッとしたといいます。こんな税理士であれば会社の税務を任せられる。経営者と協調できる、というのが採用理由です。税務署じゃあるまいし、会社の税務にはさじ加減が大切なのだ、ということでした。


ただし、本書は体系的・集中的に笑いの実例を集めたものではありませんから、期待しすぎないように。「そういう、勉強して笑いを習得するっていう“まじめさ”がダメなんだなぁ」と著者に言われてしまいますよ。