がんばっているのに報われない人のための「認められる!」技術


書名:考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術
著者:久米信行  出版社:日本実業出版社  2008年9月刊  \1,260(税込)  170P
「すぐやる! 」技術    購入する際は、こちらから


書名:がんばっているのに報われない人のための「認められる!」技術
著者:久米 信行  出版社:日本実業出版社  2009年6月刊  \1,260(税込)  202P
がんばっているのに報われない人のための 「認められる!」技術    購入する際は、こちらから


5年前にはじめて読んだ久米信行さんの本は、『メール道』という本でした。


そのころからメールのノウハウを書いた本は山ほどありましたが、茶道や華道とおなじように道を説く「メール道」がある、なんてまったく知らない頃です。
私が文章を書きはじめるきっかけを作っていただいた我が師匠、橘川幸夫さんのメルマガで知って読んだのです。


久米さんも橘川さんを師匠と慕っておられますので、私は久米さんの弟弟子ということになります。橘川さんを囲む勉強会で何度かご一緒させていただいたご縁で、私のはじめての出版記念講演会にゲスト講師として出演いただいたこともありました。


会社員ひとすじの私と違い、久米さんはベンチャー会社、證券会社を経て家業の国産Tシャツ会社3代目社長を務めておられる社会経験豊富な方です。


『メール道』のあと『ブログ道』も出版され、さらに道を究めておられると思っていたところ、昨年9月に『考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術』を発刊されました。


ついつい行動が慎重になってしまう人の背中を押すヒントが31も収められていて、ビジネス書としては良い内容と思いましたが、書名の最後の「技術」という言葉がノウハウ本であることを強調しています。


えっ? 道を説いていた久米さんが、ノウハウ本を出すの?
久米さんらしくないんじゃない?


うまく表現できない違和感を感じ、書評を書くことができませんでした。


続編の『「認められる!」技術』が1年もたたずに出版され、私の感じた違和感の正体が分かりました。
『「認められる!」技術』のPart4に「「柄にもない」と言われそうでイヤだ」という想定質問(Q22)があります。


久米さんはこの質問の答えの中で、周りの人が知っている“自分”は一部分でしかない、という「ジョハリの窓」理論を紹介し、柄にもないからといって「心のブレーキ」を踏んではいけないとアドバイスしています。


久米さん自身、ゲームが嫌いだったのにゲームデザインの仕事に夢中になり、證券会社時代は大学のゼミと全く違う分野の仕事に燃えました。ローテクと思われていたTシャツメーカーの経営者になってからは、「柄にもなく」まだ珍しかったインターネットに挑戦し、日経ITpro等に連載記事を書いたり講演会を開催するようになります。本書を書くきっかけになった明治大学「ブログ起業論」の講師も務めるようになりました。


自分自身が想像もしていなかった方向に人生が展開していく実例を通し、「柄にもないこと」に挑戦する大切さを強調する久米さんでした。


そうか。
私が感じた違和感は、久米さんの可能性を勝手に限定して考えていたからなんだ!


不肖の弟弟子は、2冊目を読んで、やっと久米さんの新しい挑戦の意味を理解しました。



あらためて読みかえしてみると、この2冊は、久米さんの若者応援精神を具体化した若者向けガイドブックに仕上がっています。


学生と接する中で感じた、現代若者気質のなかで久米さんがもどかしく思ったのは、「考えすぎて動けない」ということでした。

  • 自分から率先して声をかけられない
  • 空気を読みすぎて行動できない
  • 一度失敗すると諦めてしまう

等のありがちな31個の言い訳を、ことごとく久米さんが粉砕します。


あるときは壁を正面突破し、あるときは壁を回り込み、あるときは壁自体が幻であることを教え、行動をうながしてくれるのが『「すぐやる!」技術』です。


2冊目の『「認められる!」技術』は、生涯の師やパートナーに出会って認められることを目標に掲げ、やはり若者から返ってくる30個の言い訳に耳を傾け、一つひとつ解決策をアドバイスしてくれます。


「生涯の師」というと、生涯でただ一人に絞らなければならない、と考え勝ちですが、久米さんは違います。
「ライフワークとして追求したいテーマの師匠をひとりずつ10人選ぶ」との助言で分かるとおり、人生を豊にするために多くの師匠を持つことが大切なのです。


尊敬する人を見つけ、お近づきになり、認められて更に深い教えを受ける。そのために成すべきことを次のような30個の質問に答える形式で指南しています。

  • 認めてくれる人に出会えない
  • 相手の気持ちを動かせない
  • 失敗して笑われたくない
  • 他人に誇れるものが何もない


尊敬する人に認められるための第一歩は、アンテナを立ててその人の教えや考えをキャッチしようとすることです。
本書ではその人の本を読んだり、講演を聞いたりすることからはじまる様々なアクションを教えてくれていますが、本書に書いていない久米さん流「認められる!」技術をひとつ付けくわえておきましょう。


それは、「尊敬する人が自然に受け入れてくれるような簡単なお手伝いをする」ということです。


尊敬する人がいれば、お力になりたい、何か手助けをしたい、と考えるのは自然なことです。しかし、それが相手の気持ちの負担になるほど大きな助力になってしまっては、文字どおり「大きなお世話」です。


あまり大げさではなく、しかも確実に相手の役に立つこと――。


この難しそうな問題の答えを、久米さんの行動で見せていただいたことがあります。


橘川幸夫さんと久米さんと同席させていただいた、ある勉強会での出来事です。
勉強会が終わったあと、居酒屋でのくつろいだ懇親会もお開きになり、参加者はそれぞれ地下鉄駅に向かいました。


ここで久米さんが「車で来たので、ご自宅までご一緒しましょう」と、橘川さんに声をかけます。


お酒を飲んだあと、車で送ってもらうのはありがたいものです。
といって、タクシーでお送りすると仰々しくなる。


さりげなくマイカーでお送りすることを申し出た久米さんの車に、気持ちよく橘川さんは乗って帰られました。
久米さんが懇親会でお酒を口にせず、ウーロン茶で懇談していたのは、このためだったのです。


しかも、帰りの車中では橘川さんを独占できるという特典つき。
さすがです。


本書に書かれていないノウハウとして、皆さんも活用してみてください。