ココロでわかると必ず人は伸びる


副題:感動の数だけ力に変える6つの“教え方”
著者:木下 晴弘  出版社:総合法令出版  2004年7月刊  \1,575(税込)  239P


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私は、このブログの他に「ココロにしみる読書ノート」というメルマガを発行しています。ですから、「ココロ」という言葉に敏感で、本書もまずタイトルにひかれました。
副題にもある通り、本書は「感動」の大切さ、感動を起こすにはどうしたらよいかを述べた、「感動ノウハウ本」です。



著者の木下氏は、大学に入ると同時に有名進学塾の講師になりました。生徒たちのアンケート結果で人気が出るとバイト代が上がり、人気がなくなると辞めさせられるという、実力主義の塾です。
はじめは人気の出なかった木下氏に、ある日先輩が次のようにアドバイスしてくれました。
  「お前はその一分で生徒の心をつかんでいないだろう。
   魂を揺さぶっていないだろう。だから時間がもたないんだ」
  「授業は心や。ワザも大事だが、心がなかったらワザは生きない」


目からうろこの落ちた木下氏は、見違えるような人気講師になりました。


大学を卒業して銀行に勤めたものの、子どもたちとの魂の交流の醍醐味が忘れられず、発作的に退職届を出してしまいました。今度は幹部社員として塾に復帰した木下氏は、子どもたちを感動させるワザと心に磨きをかけます。


たくさんのノウハウの中から、印象に残ったものを3つ紹介します。

〔ノウハウその1〕


本書は、次の文章ではじまります。


 「コラアッ!」
  大声を放った私は、自分の前の机を思い切り蹴倒した。そこは地域でも
 ワルの多いことで知られる男子校の教室である。初対面の生徒たちのオシ
 ャベリがピタッと止まり、静まりかえったなかで私はこう切り出した。
 「お前ら、好きな女はおれへんのか?」


このあと木下氏が何を話したのか、気になりませんか。
この文章を冒頭に置くことで、読者は著者の世界にグイグイ引き込まれます。ダチョウ倶楽部の「ツカミはオッケー!」が聞こえてくるような見事な実例です。


教訓――授業は最初の一分間で決まる。第一印象がすべて。

〔ノウハウその2〕


よく、「うちの子は算数はいいんだけど国語がダメで」という親がいます。同じことを、「うちの子は国語がダメだけど算数はいい」と言えば子どもは喜ぶものです。
これぞポジティブトークのみほん。


国語と算数の点数は変わっていないのに、聞いた子どもの気持ちがプラスからマイナスに大逆転するのです。


教訓――日常の会話に、この「あとよしの法則」を意識すべし。

〔ノウハウその3〕


こちらの熱意が生徒に通じずに、「おまえなんかやめてしまえ!」と言ってしまったとき、どうすれば良いでしょう。
「言い過ぎた。悪かった」と非を認めるのは最悪の対処方法です。
「やめてしまえ」という言葉を否定せず、むしろ肯定して、次のように続けた方が良いのです。


 「確かにやめてしまえと言った。けど何で先生がここまでひどいことを
  言うかわかるか? お前のこと心配しているから、ワザと言うたんや。
  心配しているんやから、次はこんなこと言わすな」


教訓――失言したときは、この「肯定打ち消し法」を使うべし。




実は、私はこの本に感動しないように注意して読みました(笑)。
決して著者の木下さんを疑っているわけではありません。本書には感動のエピソードではなく、感動を引き起こすノウハウが書いてあると知ったからです。


ノウハウを説明する例として、木下さんが経験したとっておきのエピソードが語られていますから、あぶなく感動しそうになります。でも、感動を演出する人は自分自身が我を忘れていてはいけません。
グッとがまんして、冷静に読みすすんでみたのです。

ところが、最後の6章では、木下氏の熱い心から発する熱いエピソードが連打されました。物事を頭で理解するのではなく心で理解させよう、という著者の姿勢に大きく心をゆさぶられます。
“感動”しちゃったかもしれないな。


やるな、木下さん!


感動しながら感動のノウハウを学べる、お得な本です。