著者:桜庭 一樹
副題:桜庭一樹読書日記 出版社:東京創元社 2009年12月刊 \1,680(税込) 301P
何か面白い本はないかな〜、といつもアンテナを張っているからだろうか、電車で隣に座った人が本を広げると、「どんな本を読んでいるんだろう」と、ついのぞき込んでしまう。ほかの人が何を読んでいるか気になるのだ。
本書も同じ。作家の読書日記はあまり参考にならないのだが、性懲りもなくまた手にしてみた。
読みはじめて3ページで挫折しそうになった。
だめだ! やっぱりダメ。この人の読んでる本、小説ばっかり。しかも外国のものが多くて、聞いたことのない題名がほとんどだ。
プロの作家というのは、高橋尚子のように毎日何十キロも走り込んでいるんだなぁ。2、3キロのジョギングでスポーツしている気になっている素人とは、練習量が違う。レベルの違いを再認識させられた。
桜庭一樹の小説は1冊も読んだことがないのだが、「一樹」というペンネームなのに女性であることは知っていた。作家になったら男か女かわからないペンネームにしよう、と思ったのは中学校時代に読んだ本の影響らしい。
「初恋の人の名前が一樹」ではないですか、と新聞記者に質問されたこともあるそうだが、巻末の三村美衣との対談で、好きだった人の名前をペンネームにするようなことは「女はやらないですよねえ」と否定している。
やはり女流作家の高樹のぶ子が、
男の恋はインターネットを例にすれば、「名前をつけて保存」。
女性の場合は「上書き保存」
男性は、一つひとつの恋愛を別のフォルダに残して大事にします
が、女性は、今までのものを全部消去して上書きします。今はこれ
がすべてと。
と『うまくいかないのが恋』で言っていたのを思い出す。
女は過去をひきずらない、らしい。
読書法は参考にならなかったけど、面白かったのは桜庭一樹の小説の書き方。
「この長編書くぞ」と決めたら、自分が読んだ本の中から参考にする本を本棚から取り出す。床に蟻地獄のように積み上げて、それを眺めながら小説を書くそうだ。
狭い部屋なので、台所へ行こうとして蹴つまずいては直し、掃除機をかけるときにちょっとだけずらす、なんて不自由もしているらしい。
書き下ろしが終わって本棚に戻すときに作品と一区切りがついて、ひきずらないでいられるのだろう。そして、また新しい本を読み、新しい本を書く。
いつまでも過去をふり返ってしまう“男”は、ついつい同じ本を手にしてしまうのだなぁ……。