あたりまえだけどなかなかつくれないチームのルール


著者:小倉 広  出版社:明日香出版社  2008年11月刊  \1,470(税込)  233P


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「あたりまえだけどなかなかできない○○○」シリーズの1冊で、表紙デザインも装丁も他のシリーズと同じで地味な印象です。
ところがこの本、標準的なリーダの役割を書いてお茶をにごす教科書的な本ではありません。帯に「ぬるま湯メンバーが常勝チームに変わる!」と書いているとおり、ストロングタイプのリーダーを目指す本なのです。


なにしろ、著者の小倉さんの前著は『上司は部下より先にパンツを脱げ』という、体育会系まる出しの題名でした。(読書ノート4月16日号参照)
本書も、冒頭から読者にきびしい覚悟をもとめるエピソードからはじまっています。


それは、小倉さんが自分の会社の部長に「最近、メンバーの日報に空白が目立つ」と指摘したときのことでした。部長の「その通りです。あれだけ毎日伝えているのに……」という答えを聞き、小倉さんは耳をうたがいます。まるで部下が悪いと言わんばかりの口ぶりだったのです。


小倉さんは「我が社の部長にしてこのレベルか」と呆れてしまいました。


小倉さんの考えでは、リーダーとは「思い通りにならない他人を通じて目標を達成する」人のことを指します。伝えただけで人が動くのなら、リーダーなんて要らないのです。
これほど厳しい小倉さんですので、「リーダーのストレスを軽くしてくれる本」と期待してはいけません。むしろプレッシャーをかけてくる本だと覚悟して読みはじめましょう。

小倉さんの鬼教官ぶりを少し紹介します。

   リーダーの仕事とは「矛盾を解決する」こと。
   そもそも経営とは矛盾のかたまり。あちらを立てればこちらが立
  たずの矛盾だらけなのです。たとえば、長期の育成を重視すれば短
  期の売上が落ちてしまうといった長期と短期の矛盾。たとえば、個
  人のモチベーションを優先したら全体にとって最適な人材配置がで
  きない、といった個と全体の矛盾。さらには、効率を優先して仕事
  を進めると高いクオリティーが維持できないといった効率性と有効
  性の矛盾など。
   私たちリーダーはその苦しい矛盾から逃げ出して、どちらか片方
  だけを追いかけたくなってしまいます。
   しかしそれはリーダーのすることではない。「矛盾」する両方を
  追いかけるのが当然と受けとめ、その両方をなんとしても達成する
  「矛盾の解決者」でなくてはならない
のです。


ほめたり、叱ったり、あらゆる手段を使ってメンバーを動かす。
そのための具体的方法が本書には100項目書かれています。


著者が「ことあるごとにめくっていただきたい」と書いているとおり、困ったとき、悩んだときの辞書がわりによいかもしれません。