こちら本の探偵です


1985年11月刊  著者:赤木 かん子  出版社:径書房  \1,680(税込)  251P

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1983年のクリスマス・イブに、著者はいいことを思いつきました。それは、年賀状の代わりに雑誌を作って知人・友人に配ろう! ということです。そのほうが、「私は元気です、カンコ」なんて何十ぺんも書きなぐるより、よっぽど気がきいているしおもしろい。だいいち、いっぺん書けばすむ。あとはコピーがやってくれるんだから、というわけです。
好きな児童文学について書きはじめると、次からつぎへと文章があふれ出てきて、10ページ分の原稿が、あっというまにできてしまいました。最後に半ページ分の余白が残りましたので、あまり考えずに「本の探偵いたします」という記事を載せました。
昔読んで好きだったのに、本のタイトルや出版社がわからないので探しようがない本がありませんか。そういう本があったら、私が探してあげますよ、というもの。どうせ64冊しか発行しない雑誌なんだから、もし本当に依頼が来てもたいしたことはない、と軽い気持ちで書いたのです。


ところが、送り先の一人に児童図書出版社の社長がいて、その社長が知り合いの新聞記者に「おもしろいから読め、読め」と渡してしまいました。「本の探偵いたします」に興味を持った新聞記者が新聞記事で紹介したものですからたまりません。出版社経由で、著者の元に手紙がどかどか届きはじめました。著者は、うれしい悲鳴をあげながら、児童書の探偵業に精を出すことになりました。


以上のような事のおこりが本書の冒頭に書かれていますが、著者の語り口は独特です。「ねえ、聞いてきいて!」という「あれも話したい、これも話したい」文体で、ホントに本が好き! 特に児童書が大好き! という著者の心がビンビン伝わってきます。


その後、探偵依頼内容と調査結果が喜々として展開されますが、いやぁ、著者の知識の細かいこと詳しいことといったら……。マニアック、と言ったら褒めことばにならないかもしれませんが、普通の集中力では到達しえない境地がうかがえます。まるで、テレビ東京の「TVチャンピオン」を見ているような、あんぐりと口をあけて超人を見ているような、そんな感動に包まれました。


懐かしい児童書をお探しの方は、ひょっとするとヒントがあるかもしれませんよ。