正論なのに説得力のない人 ムチャクチャでも絶対に議論に勝つ人


副題:正々堂々の詭弁術
2004年10月刊  著者:小野田 博一  出版社:日本実業出版社  \1,365(税込)  198P


正論なのに説得力のない人ムチャクチャなのに絶対に議論に勝つ人 正々堂々の詭弁術


冒頭、著者はちょこっと「論理」の解説をしています。いわく、「論理が正しい」ということと「説得力がある」は違う、とのこと。
「彼女は魅力的だ。だから彼女は魅力的」というのは純然たる演繹で、論理は正しい。でも説得力はない。
かたや「彼女にはほかの女性にない独特な魅力がある。だから彼女はだれよりもずっと魅力的だ」には説得力があるように聞こえます。これは、説得力の秘密が「ほんの少しの論理の飛躍」だからです。三段論法で書くと、次のようになります。
   (1)彼女にはほかの女性にない独特な魅力がある。
   (2)独特なものがあれば、他のどれよりもすぐれている。
   (3)だから彼女はだれよりもずっと魅力的だ。
この三段論法の(2)を省略するとなんとなく説得力があるように聞こえますが、よく考えると、(2)は正しくありません。
説得力のある言葉は、実は論理的に正しくないことがある。だから開き直って「詭弁」術と呼ぼう、というのが本書のスタートです。


「詭弁」というと悪い印象がありますから、本のタイトルとしては一風変わっています。でも書いていることは、発言に説得力を持たせる方法ですので、とてもオーソドックスな内容ですね。


ちょっとおもしろかったのが、日本人はレトリックの名人、ということ。
日本人は問答法というレトリックをよく使います。「現代の女性が○○なのはなぜであろうか。それは**だからである」という書き方です。
ところが英語圏では小論文を書くときには「現代の女性が○○なのは、**だからである」と書け、と教育されるそうなのです。「自分で答えるための疑問文を書くな」という教えが徹底しているとのこと。


もう一つおもしろかったのは、説得力のない悪い論理の例として「ダブルスタンダード」が挙げられていたこと。
アメリカで実際に裁判になった例として、「男性のロッカールーム(更衣室)に男性のレポーターしか入れないのは、女性レポーターを差別している。レポーターを性で差別するのは間違いだから、女性レポーターが入るのを許可すべきだ。ただし、女性のロッカールームには男性は入ってはいけない」を挙げていました。
スポーツ好きの方はご存知と思いますが、この訴えが通って、男性のロッカールームに女性のレポーターが入ってよいことになりました。
あきらかにダブルスタンダードですが、裁判というものは論理だけでは予測できないもののようです。
説得力とは何なんじゃい!