副題:「ひょうたん島」航海記
著者:武井 博 出版社:アルテスパブリッシング 2015年12月刊 \1,944(税込) 277P
「雑誌は発売されたときに買わないとなくなってしまうけど、本はあとでも買える」と思っていた。
でも、それは間違い!
よほどの定番書籍にならないと、本はあっという間に書店の棚から消えてしまう。版元に問い合わせても「品切れ重版未定」とか「絶版」という答えがかえってくる本が多いのが現実だ。
ぼくがこのことを実感したのは、伊藤悟著『ひょっこりひょうたん島熱中ノート』という本を読もうとしたときのこと。
『ひょっこりひょうたん島』は1964年(昭和39年)から1969年(昭和44年)までNHKで放送していた人形劇である。
熱烈なファンがいまでも残っていて(ぼくもその一人なのだ!)、ひょうたん島関連の本はそこそこ売れるが、定番書籍になるほどメジャーになれない。
人形劇の台本(井上ひさし、 山元護久著『ひょっこりひょうたん島』)がちくま文庫で1990年12月に発売開始されたときは、ぼくも発売直後に買った。
500ページ以上もあるぶ厚い文庫が毎月シリーズで発売されるはずだったのだが、第13巻を出したあと続刊が出ていない。
13巻で1年4ヵ月分の放送をカバーした分量なのであと3年8ヵ月分残っているが、残念ながら、もう出版されることはない。たぶん……。
この文庫本はAmazon で13巻セットが買えるものの、1冊ずつ買うことはできない。
そうなのだ。
ひょっこりひょうたん島の関連本を見つけたら、すぐに買わないと買えなくなってしまうのだ。
それからは、伊藤悟著『ひょうたん島大漂流記 1964‐1991』も、
TVの挿入歌を集めたCD『ひょっこりひょうたん島 ヒット・ソング・コレクション』も、
手に入るうちに買った。
そして、最近みつけて買ったのがこの本、武井博著『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』
だ。
著者の武田氏は当時の担当ディレクターで、ひょうたん島の企画段階からこの番組に関わってきた人。
納得できる企画誕生までの苦しみの日々、井上ひさし氏との家族ぐるみの交流、井上氏と山元護久の共作のしかた、思わぬ不評と朗報など、番組制作者から見た当時のできごとが語られている。
ひょうたん島に興味のない人は、このブログをここまで読んでいないだろうし、ひょうたん島に興味のある人は、もう買っているかもしれないので、あまり詳しく内容を紹介するのはやめておく。
昔ながらのファンは間違いなく満足できる内容だ。
ひとつのブームを起こしたチームの栄枯盛衰記という見方をすれば、ひょうたん島をよく知らない人も楽しめるかもしれない。
出たばかりの本にこんなことを言うのは申し訳ないが、ひょうたん島ファンの方、少しでも興味を持った方は、手に入らなくなる前に購入することをお勧めする。