著者:西田 文郎 出版社:ソフトバンククリエイティブ 2011年6月刊 \1,260(税込) 188P
先日、日本経済新聞出版社さんからジェフリー・フェファー著『「権力」を握る人の法則』を献本いただいた。
この本のアマゾン内容紹介に次のように書いてある。
よくあるリーダーシップの本には、
「良心に従え」
「誠実であれ」
「本音で話せ」
「控えめに謙虚に」
……などという、《美しい教え》が書いてあります。これらは
「世界がこうであって欲しい」という《願望》にすぎません。
成功したリーダーたちが「後世に遺したい」と考えるような
美しい教えが出世の要因ではありません。リーダーたちが隠す
《悪い行動》にこそ出世の要因が存在する場合もあります。
う〜ん……。出版社さん、編集者さんには申し訳ないが、僕はこういう本を読めないなぁ。
権力を握るためにはもっと「悪い行動」をしなければならない、ということがたとえ真実だとしても、そんな真実を知ってどうするのか。
どうせ僕は権力を握るつもりはない。
たとえ「美しい教え」といわれようと、もっと人の心を信じて生きていけるような本を読んでいきたいし、紹介していきたい。
そんな思いにぴったりの本を見つけた。
それが、西田文郎著『一瞬で人生が変わる恩返しの法則』だ。
先ほどの引用した内容と全く逆の考え方を、まず2箇所紹介させていただく。著者の西田氏は次のように問いかける。
「社会的成功」を収めている人ほど、「不義理を重ねて、今日に至っている」と私は思います。とてつもなく多くの人に、迷惑をかけてきたのではないでしょうか。
本当に「他人を押し退け、他人を圧倒しなければ、競争社会は生き残れない」のでしょうか? 私はそうは思いません。(中略)ビジネスの本質は、「自分以外を喜ばせる幸せ」にあります。「成功者」と呼ばれる人たちは、必ず「自分以外の人を幸せにする」という目的を持っています。
同じ「法則」がついていても、『「権力」を握る人の法則』と全く逆の発想で書かれた本である。
では、権力を握ることに汲々としない、西田流の成功者になるにはどうしたらよいか。
西田氏の答えは「恩返しの法則」である。決して難解な法則ではない。本書の帯にたった5行で書かれている。
あなたが感謝すべき人、
10人の名前をあげなさい。
そして1年以内に、
10人全員に
あなたの「感謝」を伝えなさい。
えー、そんなことで本当に人生が変わるの〜? というのが、ふつうの読者の反応だろう。
そんな読者のために、本書には「恩返しの法則」を実践した人々が登場し、相手に会いにいくまでの葛藤や、会ったあとどんな心の変化があったのかを教えてくれる。
いつもならここで、実例をひとつふたつ挙げるところだが、やめておこうと思う。僕が挙げるひとつふたつの実例を読んで、この本を「読んだつもり」になっても仕方がないと考えたからだ。
本を紹介するブログなのに、サボッている気もするが、今回はご容赦いただきたい。
このブログで一昨年に紹介した西田氏の『10人の法則』もそうだったが、西田氏の本は情報を得るために読む本ではない。
心の中に「納得」が芽生えて、やっと読んだ価値が出はじめるタイプの本だ。
シンプルな「恩返しの法則」に興味を覚えた人でなければ、いくら内容説明しても「納得」が芽生えることはないと思う。
興味を持った人だけ、ぜひ。