SIGHT2009年WINTER


出版社:ロッキング・オン  2008年12月発行  \780(税込)  247P


SIGHT (サイト) 2009年 02月号 [雑誌]    購入する際は、こちらから


北野武著『女たち』(10月8日の読書ノート参照)を献本を受けたとき、SIGHT2008年10月号を一緒に送っていただいた。


音楽雑誌ロッキング・オンとは違い、SIGHTは総合誌という位置づけとのこと。
目次を見て驚いたのが、あの記事もこの記事も渋谷陽一がインタビューしていることだ。それも、通りいっぺんの相槌じゃない。
インタビュー相手と丁々発止やりあっていて、しかも柔軟。「なぜ日本の医療は私たちをラクに治してくれないのか」というテーマでインタビューしているのに、問いの立て方そのものの問題点を自分自身で指摘しているのには感心した。
インタビュー相手がメディアの責任を指摘したときに、「そうした高いスキルがメディアの側にない」と認めてしまう率直さも持ち合わせている。


表紙に「リベラルに世界を読む」「渋谷陽一責任編集」と書いてあるだけある。さすがだ。


今回手にした2009年2月号も、渋谷陽一が出ずっぱりだ。
オバマ金融危機を正しく読む」特集に登場する2人と、「自民党は自然死を待つのか?」という特集に登場する3人のうち1人をインタビューしている。他に、北野武の「賞を語る」と題したインタビューも、吉本隆明の「自作を語る」のインタビューもこなす。
ほとんど一人で雑誌一冊を作りあげているような超人的活躍には、脱帽するしかない。


金融危機についての相の手で絶妙だった箇所をひとつだけ紹介させていただく。
経済学者の小野善康氏が次のように言った。

バブルが膨らんでいくとどんどん豊かになったと思って消費も増やすけど、それでは使い切れなくて山のようにある金をどうしようかと思いだす。まともなところにはもう全部投資しちゃった。でもどこかに投資するしかない。そしたら、たまたまサブプライムだったり、たまたま尾上縫だったりするだけです。

ここで渋谷陽一が相の手を入れた。

――懐かしい名前ですね(笑)。


書評書きとして嬉しかったのは、本の話がたくさん載っていたことだ。……が、70ページもあると、さすがに満腹を通り越す。
日本一怖い!!ブック・オブ・ザ・イヤー2008、と銘打って、高橋源一郎斎藤美奈子の文芸編対談、北上次郎大森望のエンターテインメント編対談は、読み応えありすぎ。
小田嶋隆氏の「ベストセラーを読む ブック・オブ・ザ・イヤー特別編」がページ数も少なくて、ちょうどいい。一口サイズのデザートのように食べ頃の6冊を紹介している。
ちょっとだけ毒があって面白かったのが、『勝間和代の日本を変えよう』の紹介文。「成功した著者である勝間和代は、当面、無敵だ」「文句のつけようが無い」と揶揄しておいて、次のように結ぶ。

彼女は選挙にでも出るべきだと思う。
で、日本を変えてほしい。
好きなように。ぜひ。


今回のSIGHTも中身が濃〜い1冊だった。