著者:小林 まこと 出版社:講談社 2008年12月刊 \980(税込) 263P
1959年に創刊された週刊少年マガジンは、昨年50周年を迎えました。
『巨人の星』、『あしたのジョー』、『愛と誠』など50年の歴史を支えた話題作を覚えている方は多いと思いますが、『1・2の三四郎』はご存じでしょうか?
『1・2の三四郎』は高校のラグビー部と格闘技部を舞台にした学園コメディです。
主人公の三四郎はすぐれた運動神経をもち、女の子にモテるラグビー部に所属していましたが、ある事件をきっかけに退部してしまいました。代わりに入部しようとした柔道部の道場でレスリングの天才と出会い、もうひとり空手選手も加えて3人で立ち上げたのが「総合格闘技部」です。
3人でバカやっているうちに、柔道大会で活躍したり、ラグビー部との因縁の対決に勝利したりします。ドタバタ喜劇のなかにジーンとさせられる場面もあり、私も大学生のころ毎週たのしみに読んでいました。
本書は、この『1・2の三四郎』作者の小林まこと氏が、週刊少年マガジン50周年を記念して、連載当時の思い出をマンガで描いた作品です。
小林まことこは、この『1・2の三四郎』で漫画家デビューし、一躍人気作家となりました。アシスタント生活を2ヵ月しか経験していない小林まことにとって、プロの漫画家生活は驚くことばかりです。
まず、時間がない。
締め切りが毎週やってくるのに、すべて一人で描かなければなりません。めったにフトンで寝られない生活に、いきなり突入しました。
寝る間も惜しんで描いているのに、ちっとも進みません。締め切り日の火曜日がやってきても原稿ができていないことを知ると、編集者は製版所と交渉して1日のばしてくれました。
小林まことこは思います。
「そうか……。水曜日まで大丈夫なのか……」
つぎの水曜日、やはり原稿は上がっていません。
「どうしましょう〜〜〜」と、またも編集者に泣きつくと、「やむをえん。なんとかあと1日交渉してみるよ」と言ってくれました。
「そうか……。木曜日までOKか……」
そして迎えたつぎの木曜日。
小林まことは、金曜日までOKなことを知りました。
また、あこがれの大先生と同じパーティーに出席したり、ファンレターが山ほど届くといううれしいでき事も経験もします。
そんな“かけだし”漫画家は、小野新二、大和田夏希という同年代の漫画家と出会い、気のおけない同業者なかまになります。徹夜つづきにもかかわらず、お互い連絡なしで押しかけては、ボクシングの生中継を見たり、メシを食ったり、飲み明かしたり。
『1・2の三四郎』の3人組のようにバカやっているうちに、とうとう編集者から「新人3バカトリオ」とよばれるようになりました。
ハチャメチャな生活はいつまでも続くものではありません。
創作のプレッシャーと不摂生な生活は、3人の心と身体を蝕んでいきました。
新人3バカトリオが、とうとう自分ひとりになってしまう場面を描いた小林まことは、本書の帯に書きました。
「実は、ボロボロ泣きながら描きました」
『1・2の三四郎』の主人公たちは、努力している姿を他人に見られないようにしていました。作者も同じように、これほど血を吐く思いをしながら描いていたことを、いままで明かしていませんでした。
『1・2の三四郎』を連載時に読んでいた方には、特にお勧め。
絶対読むべき一冊です。