副題:起業家・中小企業のための新マーケティング・バイブル
著者:平秀信 林洋一
出版社:インデックス・コミュニケーションズ 2008年12月刊 \1,575(税込) 213P
2週間まえのことです。
株式会社インプロビックの林洋一さんという方からメールをいただきました。マーケティングに関してはじめて本を出したので献本したい、とのお申し出です。
「儲かる」とか「稼ぐ」を前面に出している本はあまり読まないのでお断りしようかと思ったのですが、さすがマーケティングの専門家です。私のメルマガのほめ方がお上手でした。
「ビジネスだけにとどまらず書評を書いていらっしゃいますが、
ビジネス書をビジネスという視点以外からもコメントされて
いる点は非常に興味深く読まさせていただいています」
そ、そうかなぁ(*^_^*)
あまり褒められることが少ないので、ついつい嬉しくなって「お送りいただければ幸いです」と、OKしてしまったのです(笑)。
数日して届いた本書、さっそく読ませてもらいました。
いやぁ、面白かった。
いろんな意味で刺激を受けました。
せっかくお褒めいただいたので、今回も、「ビジネス書をビジネスという視点以外からもコメント」することにします。
本書の題名の「億万長者」というのは、共著者の一人である平秀信のことです。
著者プロフィールによると、平氏は2000年に株式会社エルハウスを起業し、創業から3年で年商10億円にしたそうです。独立後6年間で総売上73億円を達成、2人の営業マンで年間62棟受注、5万部配布のチラシで300組の集客を記録するなど、めざましい業績を上げているとのこと。
平秀信公式サイトには、「借金1億円から年収5億円までの軌跡」という音声ファイルを乗せていて、収入が「億」万長者であることを公言しています。
その億万長者がマーケティングのカンニングペーパーを教える、というのです。
「そんなアホな」と相手にされない可能性もありますが、半信半疑にせよ手に取った読者は、きっと最後まで興味深く読んでしまうでしょう。
それだけ、読者をつかまえて離さないしかけが本書に施されていました。
マーケットで成功するためには、お客様の注意を引くこと、そして最後に購買に結びつけることが大切です。最後まで読ませるテクニックが散りばめられている本書は、有効なマーケット理論の実践形と言えます。
どうやって読者を最後まで引っ張っていくか。
ひとつ例を挙げます。
本書の第1章で、億万長者への道の険しさを語り、「本当に億万長者になりたいのか」と読者に質問したあと、次のように書いています。
自分が本当に求めていたのは億万長者になることではなかったと
気づいたなら、すぐに本を閉じ、自分の道を探し求めてほしい。
億万長者になりたい人が「この先も読みたい」と思うことはもちろんですが、億万長者を本気で目指しているわけではない読者も、ここで本を閉じる人は少ないでしょう。
なぜなら、こういう人は、せっかく買った本を途中で放り出すなんてもったいないと考えます。要は貧乏性(笑)だからです。
本気じゃない人が億万長者になることはない、と著者に突きはなされても最後まで読んでしまう。それが貧乏性というもの。
本書から少し離れますが、メルマガ発行者の中には、内容に自信のあることを誇示するように、冒頭に「解除はこちら」と書く人がいます。
私が購読している『一日一冊:人生の智恵』というメルマガも、先頭にも「解除したい方は⇒ (登録・解除URL)」と書いてあります。
こう書いてあると、読者は「よっぽど内容が素晴らしいんだ」と思い、期待しつつ本文に読み進むことでしょう。
なんだか「あざとい」ような気がして、私はマネしていませんが……。
読者を惹きつける方法で私がマネしない、いやマネできないものをもう一つ本書で見つけました。
それは、第3章の「億万長者になれない人の7つのパターン」です。
昼食に10万円払うことができない人、利益の8割を取りあげられることに耐えられない人、など7つのパターンを挙げているのですが、ふつうの人が昼食に10万円も払えるはずありません。
あなた達の発想と億万長者の発想は違うんですよ、と読者を引きつけながら、同時に読者の金銭感覚をマヒさせる。
ここまでやるかなぁ。
でも、これを「あざとい」と感じてしまうと億万長者への道は閉ざされてしまうのです。
7つのパターンの2番目に書いているように、億万長者になれないのは
「要するに“非道徳”に徹しきれない人たち」
なのですから。
本書の書名の「カンニングペーパー」というのは、顧客を引きつけそうなセールスレターや売り文句の優れたサンプルをストックすることを意味しています。
優れたサンプル(カンニングペーパー)を使えば、顧客を引きつけて売上を上げることができる(テストで良い点数を取れる)ようになるのです。
ただし、サンプルを集めて作るのは自分自身で、それを盗み見しながら使うのも自分です。
カンニングペーパーというくらいですから、先生が用意してくれるはずありません。
また、マーケティングの世界では、優れた販売手法はやがて参考にされ模倣されるものですから、マネすることに躊躇してはいけないのです。
私が念頭に置きながら読んだ「書評」の世界では露骨なマネは「盗用」になってしまいますが、自分の感性を磨いて優れたサンプルを集める、というところは大いに参考になりました。
私自身、多くの書評メルマガ、書評ブログに目を通しているのは、マーケティングの観点から見ても間違っていないのですね。
そういえば、書評メルマガ「ビジネスブックマラソン」の土井英司さんが書いている次の本のテーマは「目利き」だそうです。
本当に役に立つ「カンニングペーパー」を作るためにも、どうやって自分の感性を磨いて「目利き」の力を高めるのか。
もうすぐ出版とのことですが、私も楽しみにしています。
次に読みたい本はさておき(笑)、本書には刺激をたくさん受けました。起業なんか考えてもいない私でも、ものすごく参考になりました。
あなたが何かを世の中に送り出そうとしているなら、きっと行動のヒントを与えてくれるはずです。
なお、文中で紹介したメルマガ『一日一冊:人生の智恵』には、毎回つぎのようなお断りが書いてあります。
※本メルマガが紹介するのは「本の内容」であって、
書籍の著者及びその活動を推薦するものではありません。
今日の一冊『億万長者のカンニングペーパー』の著者プロフィールを見ると、林さんは私の大学(北海道大学)の後輩ですし、応援してあげたい気持ちはやまやまです。
でも、自分が試したことのない10万円以上もする教材を手放しで推薦するわけにはいきません。
本書がきっかけになって平さん、林さんの教材を購入したり、セミナーを受講する際は、どうかご自分の判断でお願いします。
操作説明書の冒頭に書いてある注意事項のようで申し訳ありませんが(笑)、言うだけ言いましたからね!
あとは自分でよく考えていただきますようお願いします。