副題:日本史の重大事件がホームページになった!
著者:藤井 青銅 金谷俊一郎/監修
出版社:日本文芸社 2008年1月刊 \1,260(税込) 206P
本書の「まえがき」に、重大な歴史上の発見が書かれています。
それは、インターネットが実は2000年前から存在していて、最近、膨大な量のコンピュータ記録が発見された、という大発見です。
さっそく修復委員会が組織されました。
修復委員会の議長が語るところによると、今回発見された記録の中で最古のものは邪馬台国のオフィシャルページで、その他、清少納言の「枕草子」ブログや、関ヶ原の戦を話題にした2ちゃんねるの「板」、多数の朝廷の公式ページ残骸等々、貴重なものがたくさん含まれている、とのこと。
本書は、その修復結果を現代語に変換した再現品です。
こりゃ、おもしろそう!!
さっそく私が手に取ったのは、言うまでもありません。
まず、こちらで表紙のアップで見てください。
源頼朝がノートパソコンに向かっています。
わくわくしてきますねえ。
本文は年代順に並べられていて、まず邪馬台国の「公式本家頁」からはじまりましたよ。
政府のページだけでなく、4ページ後には土木会社も登場しました。
前方後円墳のことなら
技術と実績の豊葦原瑞穂国土建へ
「とよあしはらみずほのくに」なんて、当時の王が喜びそうな社名じゃありませんか。
かと思えば、次のページを見ると……
出ました! 2ちゃんねるテイストの掲示板が。
仏教伝来を話題にしたこの掲示板は、「こんど百済から来た仏教って、どう?」という問いかけからはじまります。
さっそく応じたハンドルネーム「いなめ」さんが、
「魏とか大陸では流行ってるらしい。乗り遅れちゃいかんよね。なむー」
と返すと、横からハンドルネーム「おこし」さんが、
「またはじまった。大陸かぶれの厨房が」
と混ぜっ返す。
「厨房」というのは、「中坊」(中学生の坊や)を変換しようとして間違ったのが定着したネット用語です。(念のため注釈しときました)
おんらいん書店「天尊」(あまぞん)のように、現在に通じる会社名が登場したかと思うと、
板東革命的独立軍事政権
革命的マサカド主義者同盟
という物騒なセクトも出てきます。
そうです。関東で反乱を起こしたあの平将門です。
昭和の後期に中核派とゲバゲバしてた「革命的マルクス主義者同盟」(略称「革マル」)と、わずか3文字違いだったんですねえ。「革マル」と言っても、最近の若い人は知らないと思いますが……。
それにしても、発掘した古文書を、よく2ちゃんねる語やブログ調、ネット調の現代語に翻訳したものです。歴史教科書でしか知らなかった人々が、自分の言葉で書いたような息づかいが聞こえてくるようです。
しかも、単なるお遊びではなく、監修者が付いているほど細部に注意をはらった丁寧な本作りをしています。
帯に「構想2分制作2年」とあるのも納得できます。
この本気のお遊びに、フジテレビの深夜番組『カノッサの屈辱』を連想したのは、私だけではないでしょう。
最近の若い人は『カノッサの屈辱』というテレビ番組があったことを知らないと思いますが……。