カンブリア宮殿 村上龍×経済人


副題:日経スペシャルRYU'S TALKING LIVE
著者:村上 龍/著 テレビ東京報道局/編
出版社:日本経済新聞出版社  2007年5月刊  \1,680(税込)  356P


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カンブリア宮殿」は、テレビ東京で毎週月曜日22:00〜23:00に放送している番組です。
スポンサーが日経新聞社ということもあり、公開収録で主に経済界のゲストに話を聞いています。メイン司会者が作家の村上龍、アシスタントは小池栄子です。


私がこの番組に気づいたのは、もう1年以上前のこと。あんまり面白かったので、ブログにも感想を書きました。(去年の6月28日のブログ参照)


本書は、この番組の内容のエッセンスをまとめたものです。


この番組のタイトルの「カンブリア」というのは、「カンブリア紀」のことです。5億5千万年前に地球で起きた生命の大爆発現象を、群雄が割拠する平成の経済の大改革になぞらえて、村上氏が自分で命名したといいます。


テレビ番組ももちろん魅力的なのですが、こうして本になってみると、良い点がいくつかあります。


ひとつは短時間で読めること。
番組ではゲストが経営者として生き生きと仕事をしている様子をVTRで放映する他、メールや聴衆からの質問コーナー等があり、冗長な部分も多いのですが、ムダをそぎ落とした本の内容はテレビで観るよりはるかに短い時間で読了できます。


2番目の効用は、テレビでは敬遠したゲストでも、文字なら読んでみようという気を起こさせてくれることです。
本書の第5章に登場するヨシダグループ会長の吉田潤喜氏がカウボーイハットをかぶって登場したのを見て、私はビデオのスイッチを切ってしまいました。アメリカで成功した実業家と聞き、なんだか生理的に受け付けなかったのです。
ところが活字で読みはじめると、吉田氏が異国の地でどれだけ苦労をして事業を大きくしていったかが語られており、二度の破産にも負けずに復活する場面では、思わず心の中で応援していることに気付きました。


3番目は、ゲストどうしを比較して読めることです。


ゲストへの最後の質問として、村上氏は
  「では最後にみなさんに同じ質問しているのですが」
と前置きして、「悩みはありますか」「充実感や達成感を感じる時はどんな時ですか」と聞きます。
本書でもっとも対照的だったのがワタミ社長の渡邉美樹氏と、ホリエモンのフジテレビ買収事件でホワイト・ナイトとなって有名になった北尾吉孝氏。


北尾氏は、いつも目標を大きく設定しているので、満足感とか達成感とかを味わっているヒマはない。常に目標を達成する悩みを抱えて、うんざりするくらい考える、とのことでした。
かたや渡邉氏は、悩みは? の質問に「ありません」と即答しました。渡邉氏は夢に日付を入れるような人ですから、目標が低いわけはありません。それでも悩みがない、と言い切るのは、心配事を毎日打ち消すべくすべての手を打ち続けているからです。そして、毎日寝る前に日記を書いて、父と母の仏前に報告して一日を終えます。
「僕は毎日、達成感と幸せの中で眠るんです」


同じように大きな目標を持ち、同じように目標達成のために全身全霊を尽くしている。
なのに、鏡の裏と表のように人生に向かう姿勢が違う。


自分の仕事観、人生観を再確認させてくれる一書でした。