世界を見る目が変わる50の事実


著者:ジェシカ・ウィリアムズ 酒井泰介/訳  出版社:草思社  2005年4月刊  \1,680(税込)  269P


世界を見る目が変わる50の事実


世界で起こっている様々な現象から衝撃的な50の事実を選び、危機的な状況を解説したり、解決策を提言したりする啓蒙書です。意外な数字で目を引く手法は、『世界がもし100人の村だったら』に影響を受けたのかもしれません。
世界がもし100人の村だったら』は特定の著者はいませんでしたが、本書は英国国営放送局(BBC)のプロデューサが書き、著者のウィリアムズ氏の強い思い――たとえ少人数でも世界を変えられる、という確信が開陳されています。


著者が選んだ地球上の問題点の多くは、豊かな国と貧しい国の経済格差に関するものです。
たとえば、No.1の「日本女性の平均寿命は84歳、ボツワナ人の平均寿命は39歳」や、No.27の「世界で7人に1人が日々飢えている」、No.32の「世界の人口の70%以上は電話も使ったことがない」のように、びっくりするような数字が挙げられます。


一方、豊かな国の中でも様々な問題があります。
No.15「先進国の国民は年間に7キロの食品添加物を食べている」、No.17「米国で摂食障害を患っている女性は700万人、男性は100万人」等。


どの問題も深刻な問題で、先進国と後進国で違う問題が発生しているように見えますが、読んでいるうちに、「“人間の愚かさ”が根本原因で、それが違う形で現われているだけなのでは?」と思い至りました。
たとえば、No.19で「ワシントンDCで働くロビイストは6万7000人。連邦議員一人に対し125人」という問題を取り上げていました。ロビイストというのは、業界団体や企業が政治家に働きかける活動の専門家で、多額の資金が彼らによって動かされます。世界で最も資本主義が進んでいる「民主国家」のアメリカで行われていることは、富める有力者による買収行為に他なりません。
かたや、発展途上国では小役人への賄賂が常習化している、と言われます。本書でも「ケニアでは家計の三分の一が賄賂に使われる」(No.23)という問題を取り上げていました。
しかし、問題の根っこは同じ。
それが先進国では、買収する相手が小役人から政治家に代わり、金額が大きくなっただけのことです。「ロビイ活動」「ロビイスト」というと、正々堂々としたイメージを持ちますが、自分達だけに特別扱いを求める行為のどこに正当性があるのでしょうか。


他にも、
  「世界にはいまも2700万人の奴隷がいる」(No.44)
  「毎年、西欧向けに人身売買される女性は12万人」(No.47)
など、人権を尊重するはずの先進国が途上国を搾取している事実が明らかにされています。


本書を読んでいると、「人間性は進歩なんかしていない。よりずる賢く、より残酷になっているだけ」と感じてしまいました。
こんな気が重くなるような事柄を示したにも関わらず、著者は悲観していません。曰く、
  「私は、これら50の事実が世界を変えると確信している。
   本書を読み終えたあなたも、そう信じてくださることを祈ってやまない」


ウィリアムズ氏の希望的な考え方が読んだ人に伝わるかどうか。
あなたも手に取ってお試しください。