口コミ2.0 正直マーケティングのすすめ


著者:上原仁 保田隆明 藤代裕之  出版社:明日香出版社  2006年11月刊  \1,575(税込)  221P


口コミ2.0 ~正直マーケティングのすすめ ~ (アスカビジネス)


古くから「サクラ」という言葉があるように、口コミを使って商品の宣伝をする手法は、決して新しい手法ではありません。
その「口コミ」に「2.0」を付けているのは、本書が述べているのがWeb2.0時代の代表的コミュニケーションツールであるブログとSNSを舞台とした口コミ手法についてだからです。


私のような門外漢からすると、マーケティングを生業にしている人というのは、横文字をたくさん会話に混ぜて一般人を見下すようなイメージがあります。(私の勝手なイメージです。マーケティング畑の方、ゴメンナサイ)


でも、本書は横文字で読者を煙に巻こうとするような本ではありません。むしろ、一般人にも分かりやすい言葉で、新時代のマーケティングを一緒に考えてみませんか、というスタイルで書かれています。


著者の分析によると、インターネットのユーザーの半分は、まだ「見てるだけ」というユーザーです。
残りの半分を、著者は次のような分かりやすい名前に分類しました。
  (a)新しもの好きの「エバンジェリスト層」
  (b)いわゆる“オタク”な「ネット住人層」
  (c)自由な時間はあってもなかなか外出することができない「ネット主婦層」
  (d)単一目的でネットを使う「韓流オバサンとネット株オジサン」
そして、ネットで口コミマーケティングの対象となるのは(c)のネット主婦層である、と言い切ります。


おお! このキッパリとした断定が気持ちいいですね。


以下、ネットで口コミを起こすための具体的ノウハウを明かしています。
ちょこっとだけ紹介しますね。
  ○(マーケティング担当者を)企業の顔ではなく「個人」の顔でコミュニ
   ティにアプローチさせなくてはなりません。
  ○担当者として選ぶのは、できるだけ誠実で語り方にウソがなく、嫌みが
   ない人がよいでしょう。
  ○口コミはコントロールできないのです。


「専門外だけど面白かったなあ」と読み終わりかけたとき、「おわりに」に興味深い未来予測が書いてあるのを見つけました。
  ○(ブログとSNSのムーブメントは)そろそろ一段落でしょうか。
  ○これらのムーブメントを創っていったブロガーやSNSのコアユーザー
   の中には、「そろそろ次いこうか」という空気が広まっているのを感じ
   ることが増えています。
  ○私も、共著者の藤代氏、保田氏も、「ブログの次」を見据えて試行錯誤
   の中にいます。


そういえば、先日読んだ日垣隆著『知的ストレッチ入門』でも、
  人気ブログのアクセス数は頭打ちとなり(安定したとも言う)、新たに
  始める人とともに、更新が途切れがちな人々も急増中です。毎日毎日、
  人を驚かせるような出来事が起きたり、そのように見せたり、目からウ
  ロコの視点や新鮮な情報を提供し続けたり、1年に365個も話題やネタを
  打ち出せるような生活は、特殊なプロ以外ではありえないのではないで
  しょうか。
とブームの沈静化と定着を予測していました。


確かに、ブームに乗っただけの人や、続ける動機の弱い人は、やがてブログを更新しなくなるのでしょう。


冬でも海に入る人を真のサーファーといいます。
ブームが去っても続ける人が、真のブロガーなのです。きっと。