副題:[肖像画]が語る通説破りの日本史
著者:河合 敦 出版社:光文社 2006年6月刊 \1,365(税込) 274P
バイオテクノロジーなどの最先端の研究ほどではありませんが、歴史の研究もけっこう盛んで、新発見があったり、新学説が議論されているようです。
歴史学上の新しい発見、新しい定説に伴って、教科書も少しずつ内容を変えていきます。
なかでも、源頼朝や足利尊氏などの肖像画が、どうも違う人物を描いたものらしいという説に賛同する学者が多くなり、教科書から肖像画が消えています。
本書は、偉人たちの肖像にかかわるあれこれをネタに、偉人達の知られざるエピソードを紹介してくれる歴史雑学本です。
著者の河合敦氏は、現役の高校教師として日本史を教えるかたわら、おもしろ歴史本を多数執筆しておられます。河合氏の本を読むのは初めてでしたが、たくさん本を出しておられるだけあって、読者のツボを心得ておられますね。
「へぇー」、「ほぉー」、「あはは」と笑っているうちに読み終わってしまいました。
源頼朝の肖像画と思われていた人物が、どうも違う人らしい、と言われるようになりました。教科書には「伝源頼朝」というキャプションが付くようになり、そのうち、肖像写真自体が削除されてしまいます。
聖徳太子や武田信玄、近いところでは西郷隆盛も、本人の顔だちを伝えるものではなくなりました。
……という内容は、書名からも想像することですが、本書は、これとは逆に、テレビの時代劇でおなじみの「水戸黄門」や「大岡越前」や「暴れん坊将軍」の肖像画を示し、テレビのヒーローとずいぶんイメージが違うことも示しています。
特に「遠山の金さん」の晩年の姿を描いた肖像画は強烈でした。もちろん、西郷輝彦や松方弘樹の顔とかけ離れていますので、時代劇ファンにはショックかもしれませんね。
著者も「歴史の厳しい事実というものを突きつけられる」と言っていますよ。
他に、
「大岡裁きの87の逸話のうち84は江戸時代以前の物語からの引用」
とか、
「徳川綱吉の生類憐れみの令は、捨て子や子殺しを禁止する法令や、
社会福祉政策の一環だった」
「日野富子は応仁の乱の要因をつくったと言われているが、主要因で
はない」
など、歴史上のヒーローと悪役の評価が逆転するような新説も紹介しています。
私の取り上げる本は、重たい本が多いので、たまには、リラックスして読み進む本を紹介させていただきました。