クライマーズ・ハイ


著者:横山 秀夫  出版社:文芸春秋  2003年8月刊  \1,650(税込)  421P


クライマーズ・ハイ


ネット上の読書サークル参加者から、「ここ10年間に読んだ本の中でベスト」とお勧めいただいた本です。
いつか読もうと思っていましたが、ついつい、新刊を優先させてしまいます。6月に本書が文庫化されたのを良いきっかけにして、図書館に予約しました。(おいおい、買わないのかよ!)


3年前のベストセラーも、今ならすぐ借り出せます。


有名な本なので内容をご存じの方も多いと思いますが、簡単に紹介させていただきます。


主人公は、群馬県の地元紙につとめる40歳の中堅記者。かつて部下を死なせてしまった負い目を持ち、記者としての出世街道を外れています。
暗い生い立ちが影響したのか中学生の息子とうまくいかず、ギクシャクした家庭環境から逃れるように山登りをはじめました。山登りの先輩から難しいことで有名な岩登りに誘われ、いざ出かけようとする直前、あの御巣鷹山への日航機墜落事故が発生しました。


主人公の将来を心配する報道局長は、この未曾有の事故を報道する全権デスクに彼を任命します。
降ってわいたような事故に対処するために沸き返る新聞社内。
記者を振り分け、原稿に赤を入れ、事故の大きさに向かい合ううちに、主人公には記者魂がよみがえってきました。


上司や他部門と軋轢を起しながらも、少しでもいい紙面を作ろうとする主人公。いっしょに岩登りするはずだった先輩の不可解な入院が重なり、事件のスクープと先輩の入院の謎解きを交えて、物語はクライマックスへ……。


小説家になる前、著者は群馬県の上毛新聞という地元紙の記者をしていました。事件記者としてサツ回りも担当し、御巣鷹山日航機事故も現場取材を経験しています。
事故から20年近い歳月が流れ、著者の経験は読み応えのある小説にまとめられました。


この作品を、著者は次のように語っています。
――記録でも記憶でもないものを書くために、18年の歳月が必要だった。


重い主題なのに、最後にはさわやかな結末が用意されています。
「ここ10年間に読んだ本の中でベスト」、という言葉は伊達じゃありませんでした。


私もお薦めします。