「へんな会社」のつくり方


副題:常識にとらわれない「はてな」の超オープン経営術
著者:近藤 淳也  出版社:翔泳社  2006年2月刊  \1,575(税込)  182P


「へんな会社」のつくり方 (NT2X)


私がブログを無料でアップさせてもらっている「はてな」というのは、2001年7月に設立された、まだ若い会社です。ホリエモンサイバーエージェントの藤田社長ほど派手さはありませんが、知る人ぞ知る、将来有望企業らしいです。


本書は、その若い会社の若い社長が、ちょっと変わった「株式会社はてな」の経営の工夫を公開するはじめての本です。
はてな」は、毎日席替え、や、開発合宿、会議は立ったまま、社員はみんな自転車通勤など、確かに一風変わったことをしている会社です。変わったことをするには一つひとつそれなりの理由があり、効果もあらわれているそうですが、読者が自分の会社で取り入れようとすると大変かもしれませんね。「常識」の壁は厚いですから。
でも、2人で一つのプログラムをコーディングすることは、他でも成功例が語られるようになりました。この本に書いてあることのいくつかは、いずれ常識になるかもしれません。


はてな」のすごいところは、なるべく広く情報をユーザに公開することでことです。それが、たとえユーザのクレームの元になりそうな問題だったとしても。もっとすごいのは、単に情報を公開するだけでなく、問題解決の道を探るために、ユーザの力を利用することです。
本書に一例として紹介されている、
  ユーザーからの要望を受け付ける「はてなアイデア」が要望の重要度を決定する方法、
には舌を巻きました。


せっかくソフトウェアを開発するのですから、多くのユーザが喜んでくれるものにしたい。でも、ユーザから寄せられる要望には、すぐに実現できそうなものもあれば、「料金を半額にしてほしい」というような、すぐには実現できそうもないものもあります。
はてな」は、先物取引のような予測市場を用いて、ユーザの要望の強さを見極めることにしました。多くのユーザに「はてなが実現する」と予想する要望事項に投票してもらい、予想が当たった人にポイントをプレゼントするのです。
「料金半額」のような要望は、たとえユーザー自身が望んでいるとしても「はてなはやらないだろう」と考えられますから、あまり魅力的な銘柄ではありません。実現しやすく多くのユーザが喜ぶような要望にこそ、投票が集中することになります。
多くの票を集めたものが「どの要望を叶えるべきか」の答えになっているのです。


この、予想が当たると見返りがある方式は、他のサービスにも応用されています。
でも、さすがに「総選挙はてな」にはビックリ。これは、政党の仮想株式を取引し、議席数を予測するサービスです。そりゃ、たくさんの人が見返り目的で予想すれば、より正確な予想が出せるのかもしれませんが。
ちょっと不謹慎では……、なんて考えてしまう人は、常識の呪縛を受けているのでしょう。


ともかくユニークな会社です。
がんばれ! 私の大家さん!