県庁の星


著者:桂 望実  出版社:小学館  2005年9月刊  \1,365(税込)  255P


県庁の星


昨年『躍る大捜査線 THE MOVIE 2』のテレビ放映を見ていたら、映画の内容を紹介する織田裕二のバックに「県庁の星」が映っていました。
そうかー、織田裕二の次回作は『県庁の星』っていうのかー、と図書館に予約して約4ヶ月。ちょうど、映画の封切りに合わせるように私の順番が回ってきました。


小説なのかドキュメンタリーなのかも知らないで手に取りましたが、本書は小説でした。Y県職員一種試験に合格したエリート公務員の野村が主人公です。民間企業の良いところを官庁にも取り入れる、という人事交流研修(どこかで聞いたような……)に抜擢され、研修先のスーパーマッケットに向かいました。
実際に着任してみると、店は活気がなく、店員もサボることばかり考えている3流スーパーでした。古くなった食材を平気で使う惣菜売場は、いつ食中毒になってもおかしくない状態です。
このままでは、自分のキャリアに傷がつく。小学校からずっと成績優秀、品行方正、期待の星だったのに、と野村は愕然とします。
かたや、野村を預かることになったパートの二宮も、野村の融通の利かなさに呆れました。なにしろ“県庁さん”ときたら、客ともめごとを起こしては、「そんなこと、最初に言ってくれないあなたが悪いんです」と開き直るんですから。ふつうの人間なら、客の立場にたてば分るだろうが!


そんな二人が協力するようになり、店員の士気があがって店の経営危機を脱する、というハッピーエンドの物語です。
ステレオタイプといえばその通りなのですが、こういう分りやすい設定が映画の原作として採用された原因なのかもしれません。


昔のカドカワ映画の宣伝で「(映画を)観てから読むか、(原作本を)読んでから観るか」というキャッチコピーがありました。たぶん、映画は人手とお金をかけて素晴らしい出来上がりになっているでしょうから、本書は観る前に読むことをお薦めします。
ちなみに、めったに映画を見ない私ですが、この映画は前売り券を買いました。織田裕二が新境地を開いた映画、というのを見るのが楽しみです。