正直者はバカを見るな!


2005年1月刊  著者:弘兼 憲史  出版社:中経出版  \1,365(税込)  189P


正直者はバカを見るな!


著者は漫画家として『人間交差点』『課長 島耕作』などの大ヒットを飛ばし、テレビのニュースショーに出演して辛らつなコメントを飛ばす“文化人”としても知られています。
本書は、そんな著者が自信たっぷりに人生観を披露し、ヒロカネ流処世術を教える教訓本です。
「教訓」といえば、昔から使われている「ことわざ」があります。短い言葉に人間の知恵が凝縮され、語り継がれてきたことわざを、著者は敢えて逆の言い方に換え、ヒロカネ流に活かす方法を披露していきます。本書のタイトルの「正直者はバカを見るな!」をはじめ、「君子危うきに近寄れ!」「果報は寝て待つな!」など、全部で20個の格言を仕事、遊び、行動の3章で展開しています。


テレビの発言を聞いていて、「なんかエラそうな人だなぁ」と感じていましたが、本書の全編を貫いている「どうだぁ。オレの考えは正しいだろぉ」といわんばかりの自信には、「おっしゃる通りでございます」と引き下がるしかありません。
でも、面と向かって言い返せないのでこっそり言いますが、世の中にはヒロカネ流で割り切れないことも多いのですよ。
たとえば、著者は次のように言います。
  「上司との付き合いに気を遣うくらいなら、肝心の仕事に神経を集中させるべき」
  「恐れることはない。自分自身の方針を貫くべきだ」
  「最後に正義は勝つのだから」
「正義」って言われてもねぇ……。島耕作のように有能な人ならともかく、自分のことを「正義」だなんてつっぱっているヤツにロクなやつはいませんよぉ。上司の欠点は欠点として、そこそこお付き合いする「良い加減さ」も重要と思いますけどねぇ。


私の感想はさておき、どこを切っても自信がのぞいている著書は、努力と行動で全てが開けると信じる強気の人で、彼の作り出したキャラクター「島耕作」そのものです。
島耕作は、自分から言い寄らなくても、次から次へと美人が近づいてきます。仕事も課長→部長→取締役ときわめて順調ですが、著者は島耕作をスーパーマンと思ったことがない、とのこと。島耕作は、恋愛にも仕事にも、常に一定のルールを与え、そのルールに従って日々努力しているだけ。彼の行動自体が幸運を呼び込んでくるのだから、彼をねたむ前に、彼の行動なり努力なりを自分もやってみたらどうか、と読者を挑発します。
じゃ、島耕作のルールって何だよ! という方、本書を熟読あれ。