ローマ人の物語13


副題:最後の努力
2004年12月刊  著者:塩野 七生  出版社:新潮社  価格:\2,730(税込)  296P


ローマ人の物語 (13) 最後の努力 (ローマ人の物語 13)


15巻の予定でスタートしたローマ人の物語も、第13巻が出ましたので、あと2冊となりました。


ひとつ前の第12巻で語られた紀元211年〜284年には22人の皇帝が登場し、次々と謀殺・自殺・戦死・事故死などで消えていきました。
第13巻の本書で語られる紀元284年〜337年にも10人近い皇帝・副皇帝が登場しますが、著者は、大きく「ディオクレティアヌスの時代」と「コンスタンティヌスの時代」に分け、二人の足跡を中心に物語を進めています。
あんなに強大だったローマ帝国は、最盛期の輝きを失い、周辺の蛮族は侵入してくる、内戦は起こる、税金は上がる、と、いろいろな問題が噴出してきました。


ディオクレティアヌス帝は、自分一人では広大なローマ帝国を防衛しきれないので、副皇帝を任命して東半分と西半分を分担します。そして、この2頭政から10年もしないうちに更に2人の副皇帝を任命して4頭政にしました。4人それぞれに直属の軍を持ち、機動力が増したおかげで蛮族の侵入を撃退できるようにはなったのですが、軍団兵の数がほぼ2倍に膨れ上がり、税金は上がる、農村が疲弊する、治安は悪化するなど、ローマは衰退するばかりです。
ディオクレティヌス帝が引退した後に内戦が起こりますが、最終的な勝者となったコンスタンティヌスが独裁体制を確立しました。彼は、職業選択の自由を無くし、通貨改革のため銀本位制をやめて金本位制に移行させる等の改革を行いますが、かえって貧富の格差が拡大し、兵の質は更に下がりました。


この二人の皇帝よって、ローマ帝国は3世紀の危機を乗り越えて再生したとする歴史家の意見もありますが、著者は懐疑的です。確かにローマ帝国の滅亡をいったん食い止めたかもしれません。しかし、そのために払った多大な代償を考えると、「これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのか」という問いが自然にわきあがってくる、と著者は言います。
これ以後、ローマ帝国はどのように悲惨な百年を経て滅亡したのでしょうか。第14巻が早く読みたくなりました。