ザ・フェミニズム

2002年3月刊  著者:上野 千鶴子・小倉 千加子
出版社:筑摩書房  価格:\1,575(税込)  250P


ザ・フェミニズム


以前紹介した「『赤毛のアン』の秘密」の著者小倉千加子上野千鶴子フェミニズムについて大いに語った本ということで、手にとってみました。


いやぁ、二人ともよく喋ること。大阪生まれの小倉氏と富山生まれの上野氏が、関西弁で笑いを取りながらポンポン会話が弾みます。その小気味よさに引き込まれ、自分も聴衆のひとりとして客席で爆笑しているように感じること請け合いです。
フェミニズムというと、近づくと噛み付かれるような、なんだか少し恐いイメージがあります。それは、たぶん田島陽子センセのテレビ討論を見たときのイメージなんだろうと思います。
本書で少しだけ分ったのは、フェミニズム教条主義的なものではなく、小倉氏が「一人一派」と言っているようにいろいろな考え方があるということです。お互いに相容れない部分を隠そうともせずに話しあう(言い合う)様子には近寄りがたい印象を与えるところがあるかもしれませんが、今まで社会的発言を抑圧されていた女性が自由に意見を主張することがフェミニズムのスタートなんでしょう。


もう10年以上も前に話題になったアグネス論争(子育てをしながら働く女性が、職場に子どもを連れていくことの是非を論じたもの)だけでなく、結婚という制度を認めるかどうか、雇用機会均等法をどう評価するか、フェミニズムを日本語でどう言うか、等々、フェミニストどうしでも意見が違うようです。


それにしても二人の言葉は過激です。結婚制度についての上野氏のお言葉を引いてみましょう。
「異性のカップルで、二人で末長く仲良く、お互いにルール破りしないで、一穴一本主義でやりたい人は趣味でやったらよろし。(中略)自分の性関係をいちいち、なんでお国に届けなあかんのや。これから一生この人とだけやります、とか、キャンセルしました、とか、なんで言わなあかんのよ、あほらしい」


女性の置かれている困難な状況を語るとき、ともすれば、不満と愚痴になりがちな気がしますが、二人は前向きです。少し長いですが、最後の小倉氏の発言を紹介しておきます。
   愛とは何かと聞かれたら、フーコーは「相手を喜ばせることがで
   きる一切の事柄の総計」と定義しています。みごとな定義やと思
   います。私がフェミニストであり続けることに理由があるとした
   ら、それやとしか言えない。私は人を、周りの人たちを喜ばせ続
   けたい。なんでか言うたら、世界中が色彩にあふれて見えるから。
   愛が飛び交う濃密な関係をあっちこっちでみんなが実践すればい
   いと思う。もう、それは始まっていまような気がするんよ。


よく知らないので近寄り難い、と思っていたフェミニズムが、本書のおかげで少し身近になった気がしました。