アンガー・マネジメント


副題:アメリカ・エグゼクティブの間で爆発的に普及! イライラ、ムカムカを一瞬で変える技術
著者:安藤 俊介  出版社:大和出版  2008年10月刊  \1,470(税込)  223P


アンガー・マネジメント―アメリカ・エグゼクティブの間で爆発的に普及!イライラ、ムカムカを一瞬で変える技術    購入する際は、こちらから


「キレる」、「ムカつく」という言葉を日常的に耳にします。今の世の中、怒りっぽい人は多いようです。


もっとイライラせずに過ごせばいいのに……。
――人ごとのように思っていた私は、つい先日、ハッとさせられる出来事に出会いました。


風呂あがりの私は、ヘアドライヤーで小学校一年生の娘の髪を乾かしていました。いつものように娘はおもちゃを手にして遊んでいましたが、この日は言うとおりに首をかたむけてくれません。


「ちゃんとしないと乾かないよ。おもちゃで遊ぶのやめなさい!」


少しきつく叱りました。
娘は急に静かになりました。気がつくと、ボロボロ涙をこぼしています。
「パパこわい。いつもカミナリの中でくらしているみたいだ……」


グサッときました。
そんなによく怒っているのでしょうか。


カミさんに聞いてみたところ、
  「そうだよ。最近、急に怒りだすことが多いよ」
と追い打ちをかけられました。


そうかなあ……。
でも、そう言われれば、私が怒りだしたせいで夕食が台無しになったことが結構あるなあ……。
反省しなくちゃ。



待ってました、とばかり私の前に登場したのが本書です。


アンガー・マネジメントというのは、「怒り」を「管理する」こと。怒った気持ちを上手にコントロールする方法を教えてくれる、今の私にぴったりの本です。


著者の安藤氏の指摘するように、怒りのままに行動して良いことなどひとつもありません。
食品中毒事件の当事者である社長が「私は寝てないんだ!!」と叫んだ事件をご記憶のことも多いでしょう。記者の執拗な追求にムカッとして言ってしまった発言で、この会社はマスコミと世論を敵に回してしまいました。


もうひとつ、代表的な例として本書で引かれているのが、2006年サッカーワールドカップ勝戦で起きた事件です。
サッカーファンでなくても、フランスのジダン選手がイタリアの選手に頭突きして退場した場面は覚えていることでしょう。人種的差別的発言をしたのではないか等、その後も大きな話題となりましたが、ジダン選手の行為はとてもプロとは言えない、と安藤氏は言います。


ワールドカップ勝戦に出場している選手であれば、どんなに罵倒されても相手にせず、プレーで仕返しすべきだったのです。
頭突きをすると決めた瞬間に、ジダン氏は役割を忘れ目的を放棄しました。
挑発に乗った瞬間に、フランスの敗退は決まったのです。


では、どうやって怒りを静めたらいいのでしょうか。


安藤氏は、怒りには3つの段階がある、というところから解説をはじめます。


  第1段階 出来事に遭遇する
  第2段階 出来事の意味づけ
  第3段階 怒りの発生


この第3段階に至ってしまう前に、どこかで頭を冷やすのがアンガー・マネジメントの第一歩です。


いくつか応急処置を教えたあと、安藤氏は、もっと本質的に怒りをコントロールするために、コアビリーフとトリガー思考を突き詰めることを勧めます。横文字で難しそうに聞こえますが、コアビリーフというのは、怒りだすときに自分の感情を支配している価値観のことです。


たとえば、「部下は上司に口答えすべきではない」と思っている上司は、部下に何か言い返されるとムカッときますし、「上司は部下にやさしくすべき」と考えている部下は、優しさを感じられない上司の言動が許せません。


安藤氏は「その価値観を変えなさい」とまでは言いません。しかし、世の中にはいろんな考え方があるのだから、自分の考えだけが正しいとは思わないほうがいい。そうすれば、怒る代わりに「かわいそうな人だ」と冷静に対処することができるのです。


もうひとつの横文字「トリガー思考」というのは、怒りが表に出るときの「きっかけ」のことです。自分が怒りだす「きっかけ」を知っておけば、誰かが気にさわることを言ったとしても、「まずい、これは自分のトリガー思考だ」と先回りできるよう
になります。
だから、自分の「トリガー思考」をよく理解しておくのが大切なのです。


少し理屈っぽく感じる部分もありましたが、むしろ理屈っぽいのが良いのかもしれません。
怒りそうになったとき、「そうかぁ。自分の怒りのトリガーはこれなんだぁ」と、ひと呼吸おき、「どうしてこのトリガーで怒るようになったかなぁ……」と、感情より理性的思考に持ち込む。
そうすれば、怒りを抑えられるに違いないのです。


ここ10日間、我が家では楽しく食卓を囲んでいます。
きっと、この本を読んだおかげです。


最後に、本書の帯の言葉を引用しておきましょう。

  「あんなこと言わなきゃよかった」と後悔したことが一度でもある人へ