仕事はストーリーで動かそう


著者:川上 徹也  出版社:クロスメディア・パブリッシング  2008年11月刊  \1,523(税込)  189P


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著者の川上さんは、広告代理店で営業と制作を経験したあとフリーランスのコピーライターとして独立し、様々な企業の広告制作に携わってきました。
東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など多くの賞を受賞しながらも、川上さんはコピーライティングに満足しません。
広告の仕事をしながら脚本家を目指したのですが、何度かブレイクするきっかけを逃してしまいました。


あるとき、注文仕事がとぎれて時間ができたのをきっかけに、川上さんは「自分だけの武器ってなんだろう?」と、この先の方向性を真剣に考えます。
考えているうちに、「こういう仕事を頼める人がなかなかいないんですよね」とクライアントからと言われたのを思い出します。
「こういう仕事」というのは、ビジネスとエンターテインメントを融合させるような仕事です。


脚本家が舞台やドラマのようなエンターテインメント用の台本を書くように、ビジネスの世界にストーリーを提供する仕事。そういえば、最近の川上さんの仕事には、企業をテーマにしたビジネスゲームのシナリオを書いたり、企業のウェブサイトで内幕小説を書いたりする仕事が多くなっていました。


「そうだ。ストーリーだ! ストーリーをビジネスに活かそう!」


新しい方向性を決めた川上さんは、2年間に本を10冊出すことを決意し、出版業界人との接触を増やします。


川上さんの決意を待っていたかのように、数年前に書いた舞台脚本を元にした出版のオファーが飛び込みます。
多重債務、離婚、相続など、どの家庭でも起こりそうなトラブルを街の司法書士が解決する様子をドラマ仕立てにしたもので、まさにストーリーをビジネスに活かす実例です。
この1冊目が『司法書士がズバリ解決! ドラマでわかる 身近なお金のトラブル』として6月に出版されると、早くも8月には2冊目のオファーを受けます。
出会うべくして出会った編集者から提案されたのが「物語(ストーリー)力」。それが本書『仕事はストーリーで動かそう』に結実しました。


本の内容に入る前に、著者が本を出すまでのストーリーを少し長めに紹介しました。
というのも、私の書評はネタばらし自粛でお届けしているので、本書に登場するストーリーで売上が伸びた例、ストーリーで企業が生まれ変わった例、すぐれたストーリーでオリンピック開催地まで変えてしまった例などの内容を紹介できないからです。


代わりに、私がいちばん感動したストーリーである川上さんのセルフブランディングシンクロニシティのドラマをお伝えしました。
理論的に「強みに特化せよ」なんていわれるより、よっぽど腑に落ちるストーリーだと思いませんか?


川上さんが本書で強調しているように、人はロジックやデータだけでは動きません。感情で動く動物なのです。
そもそも人類は太古の昔からストーリーが大好きでした。
ビジネスの現場でもストーリーを使わない手はありません。
しかも、専門家でなくてもストーリーをつくることができるのです。


「仕事力」に関するビジネス書に、いままで無かった切り口をお試しください。