生きていてもいいかしら日記


著者:北大路 公子  出版社:毎日新聞社  2008年1月刊  \1,470(税込)  206P


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エッセー集です。


どこかで売れる本の特集を読んだとき、エッセイを書きたい素人の多さに反比例するかのように、売れるエッセイというのは少ない、と書いてありました。


作家や芸能人が書いたエッセーなら読者も多いのですが、無名人のエッセーはまず読まれません。これから本を出そうと人が最も手を出してはいけないジャンルの一つである、と断言していました。ブログに自分の日常を書く人は多くても、エッセー集として商業出版できる人は少ない、とのこと。


言われてみれば、確かに私も無名人のエッセーを読むことはほとんどありません。


今回も、題名に惹かれて本書を手にしたもの、まったく聞いたことのない著者ですので、おもしろくなければすぐにやめるつもりで読み始めました。


1つ3ページの小話を集めた構成です。
読み始めて3ページで、「ん?」と思いました。
6ページ読んだところで「クスリ」とし、12ページで大笑い。
20ページ読んだあたりで、この人の文章力に脱帽しました。


これはいい人を見つけた!


著者は40代(たぶん後半)の独身女性で、札幌市内で親と同居。
好きなもの、昼酒。
座右の銘は「好奇心は身を滅ぼす」。
職業はライターという一種のプータローで、ときどき引きこもりしては社会復帰を繰り返すというトホホな生活を送っています。


「いいとこなし」のキミコさんの日常は、とくに大きな事件は起こりませんが、なぜか笑えるネタが転がっています。


昼間の回転寿司で楽しくビールを飲んでいたら、となりに座ったじいさんに説教された、とか、
トイレ掃除をしていて、うっかりボタンに触ってシャワートイレの水を頭からかぶってしまった、とか
2年も会っていない友人から涙ながらに「話があるから来て」と電話を受け、行ってみたら30万円もする鍋を売りつけられそうになった、等々。


たまに「何もない一週間だった」という書き出しではじまったと思ったら、本屋のトイレの前で大学生くらいの女の子が「私、妊娠したかも」と涙ながらに男の子に告白している場面に出会ったりしています。
一瞬でふたりの関係を理解したキミコさんは、三角関係の女の子がもうすぐ現れるにちがいない、と想像力をはたらかせました。立ち読みしながら三角関係の女の子を待っても、だれも現れないのですが、待っているあいだに、このあとの二人の修羅場の様子にまたもや想像の翼を広げます。


キミコさんのこの妄想癖は、自堕落な生活の様子と共に、一種の「芸」の領域に突入しています。たとえて言うなら、ちびまる子ちゃんがそのまま大人になったようなものでしょうか。


サンデー毎日』の連載エッセー。大人気だそうです。


私からも、超お勧め!!