イサの氾濫


著者:木村 友祐  出版社:未來社  2016年3月刊  \1,944(税込)  158P


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東北を舞台にした短編小説である。


主人公の将司は、40歳を過ぎて職を転々としている。


大学を出て小さな出版社や印刷会社に勤め、本に関わる仕事をしていたこともあるが、人間関係につまずいたり仕事がきつかったりして、さまざまな仕事をわたりあるくようになった。


フリーターや転職を美化する風潮もあり、30代のうちは「まだやりなおせる」と自分に言い聞かせることもできた。
しかし、40代をむかえてしまった今、自分が恐れていた事態に陥ってしまったことをはっきりと自覚した。

金もない、女もいない、友だちもいない、顔もよくない、服選びのセンスもない、夢もない、人づきあいもうまくできない、仕事もできない、機転が利かない、愛想もない、おもしろくない、人に好かれない、暮らしを楽しめない、つまり人としての魅力がない。ない。ない。ない……。


ないないづくしのなか、いつも決まって見る夢のなかに、叔父の「イサ」
が現れるようになった。

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