著者:米光 一成 出版社:ベストセラーズ 2007年7月刊 \1,260(税込) 125P
仕事で使う私の名刺には
「PMI認定PMP(Project Management Professional)」
という資格名が書いてあります。
知らない人も多いかもしれませんが、これはアメリカのPMIという団体が、「あなたはプロジェクトマネジメントのプロであると認定します」というお墨付きを与えてくれる、とてもありがた〜い資格なのです。(オッホン!)
いやしくも、プロと認められた私ですので、「プロジェクト」という文字には敏感です。まして、「プロジェクトを楽しくする」というタイトルでは、放っておけるわけがありません。
ところが、いざ手にとってみると、この本、見なれたプロジェクト本と雰囲気が違います。表紙にはドラクエの登場人物みたいなキャラクタが載っていて、技術書らしくないテイストです。
それもそのはず、著者の米光さんは、一世を風靡したアクションパズルゲーム「ぷよぷよ」を世に送り出した人で、ゲームの企画監督脚本を本職にしています。おなじコンピュータソフトウェアプロジェクトでも、私が慣れ親しんだ企業や官公庁向けシステムのプロジェクトではなく、個人向けにおもしろいゲームを作り上げるプロジェクトを手がけてきた人なのです。
ですから、プロジェクトに向かう姿勢からして、全く違います。
米光さんは次のような前提で本書をスタートします。
プロジェクトを成功させるための肝は、人をうまく
コントロールする術でもなく、話術でもなく、管理能
力でもない。
肝心なのは、「プロジェクトに参加しているみんなが
楽しく作業できる場をいかに作り出すか」である。
おもしろいゲームを遊んでいる時のように、みんながいきいきとプロジェクトに参加できることが大切だとおっしゃるのです。
クリエイティブなプロジェクトは、「成功」のイメージ自体が私が教わってきたことと違います。こりゃ、「自分はプロだ」なんて言ってないで、米光ワールドにハマッてしまった方が楽しそうですよ。
読みすすんでみると、この本は徹底的にプロジェクトをロールプレイングゲームに喩えていることが分かりました。プロジェクトは「冒険」、ビッグプロジェクトは「大冒険」、プロジェクトマネージャのあなたは「勇者」と呼ばれます。つづいて会社の上司を示して「王様」に「うえのひと」とふりがなをふったあたりから、本書は佳境に入っていきました。
「王国」のルビは「かいしゃ」、仲間のルビは「メンバー」。
さあ、いよいよ、めくるめく冒険のスタートです。
一部、どう見てもゲーム開発にしか使えない箇所も出てきますが、「出たい人だけミーティング!」とか、「仲間から人望を得る」「リーダーの鉄則」など、125ページという薄い本の中にふか〜い内容が込められています。
いちばん共感したのは、本書のタイトル「攻略本」についての米光さんの考えでした。
攻略本の通りにゲームをするなんて、とてもつまらないこと。だからこの本は、プロジェクトが簡単に進む方法を書くのではなく、プロジェクトの楽しさが倍増するヒントを満載した。とのこと。
自分で考えなければプロジェクトマネジメントは身に付かない、と私も実感しています。
プロジェクトに携わっている人は、自分のプロジェクトを思い浮かべながら読むことをお勧めします。