オレは聞いてない!


副題:上司はなぜ部下の話を聞けないのか
著者:斎藤潔  出版社:徳間書店  2006年6月刊  \1,470(税込)  247P


オレは聞いてない! 上司はなぜ部下の話を聞けないのか    購入する際は、こちらから


上司にきちんと報告したはずなのに、伝わっていない。しまいには「オレは聞いてない!」と怒り出す、という経験のある人には、身につまされるタイトルです。


伝わらない原因は、上司にも部下にもあるかもしれませんが、コーチングのプロである著者の斎藤氏は、「人の話を聞かない上司」に焦点を当て、伝わらない理由を解きほぐしてみせます。そして、主に上司の立場の人間に向かって、部下との間でしっかりしたコミュニケーションを取る方法を具体的に指南します。


「優秀な人間がいない」「うまく部下と接することができない」など、ビジネスの現場で上司がついついグチってしまいそうなことがらの解決策がたくさん書いてありますが、本書は単なるコーチングのノウハウを教える本ではありません。コーチングを何も知らなかった著者自身が、この新しい手法を知ることによってどう変わったかという実例を通じ、自分自身で実感したことに重点を置いて書いている「体験記」なのです。
ですから、何でもかんでもコーチングで解決できるというようなコーチング万能主義に陥ったりせず、冷静に、
  「コーチングの手法でダメな人は、指示命令型を徹底させるスタイルに
   変えればいい。権限委譲もしなくて良い」(趣意)
と述べています。


何でもかんでもいいことずくめと言われると、げんなりしてしまうものですが、これは説得力があります。


その説得力の中核は、何といっても、平凡なサラリーマン(著者)がコーチングを知ったこと・実践したことで大変身したことです。
3つの会社が合併して、社内の雰囲気が最悪になったことに悩んでいた斎藤さんは、社風を変えようと思ってコーチングの門を叩きました。社内の管理職全員にコーチングを教えながら、斎藤さんは個人コーチとも契約して自分もコーチングを受けてみます。


社内での問題点や、コーチング手法への疑問点を個人コーチにぶつけているうちに、斎藤さんは忘れていた夢を思い出しました。それは「50歳で独立する」という漠然とした人生設計でした。
自分が本当に何をしたいのか。
個人コーチと会話しながら自分の中に答えを求めた結果、とうとう斎藤氏は会社を辞めて独立することにしました。


本当に独立し、自分がサラリーマン時代に経験したことを振り返りながらクライアントと話していくと、コーチングの力で相手が変わっていくことに斎藤さんは気付きました。


そんな斎藤さんが教えるコーチング法とは……。


漠然と「独立したい」と夢を持っている人が本書を手に取るときは、心して読むことをお勧めします。