想い


副題:三茶の焼肉、世界をめざす
著者:西山 知義  出版社:アメーバブックス  2006年3月刊  \1,575(税込)  253P


想いー三茶の焼肉、世界をめざす


業界トップを走る経営者の書いた本を、最近2冊手に取りました。

1冊は岡野雅行著『人のやらないことをやれ!』。
岡野氏は、誰もマネのできないものをつくることで有名な町工場の経営者です。
岡野氏の開発した「痛くない注射針」が小児糖尿病の苦痛を救ったという感動的TVドキュメントを見て、読みはじめました。
人格的にも、とてもりっぱな経営者とお見受けしましたが、本人の思い出話や若い人への教訓がストレートに心につたわってきません。


読ませる内容に仕上がっていないことが残念でした。


もう1冊が、今日の一冊、『想い』です。
若い人に向かって経営者としての経験を語る、という同じ目的で書かれた本書を読んで、今度は著者の行動に共感し、「想い」を受け止めることができました。
どちらがすばらしい経営者・人格者と優劣をつけることはできませんが、どちらの著作が心に響いてくるかは明らかです。


やはり、読者に伝わる文章、伝わらない文章というのがあるんですね。


ということで、今日おすすめする本の著者は、焼き肉チェーン店『牛角』、コンビニ
am/pm』、高級スーパーマーケット『成城石井』を率いて世界を目指す経営者、西山知義氏です。
著者は、若くして賃貸不動産の会社を興し、試行錯誤しながら会社を存続させていきました。
不動産賃貸業の競争は厳しく、他の業界の勉強を兼ねて社長自身が他社のアルバイトも経験します。また、内装工事会社に手を広げたはいいものの、倉庫のようになった事務所で汗だくになって過ごしていたこともありました。
あまりの暑さにエアコンを購入するかどうか3日3晩議論をしているさなか、女子社員が退職。男所帯になるならエアコンはいらない、という結論に達した、という笑い話も載ってます。


数々の試練を気合だけで乗り切り、どうにか年商3億円ほどの企業にまでこぎつけた頃、著者に転機がおとずれました。
雑誌社が企画した座談会で質問された「みなさんの会社の差別化は?」という問いかけに自分だけ答えられず、みじめな思いをします。


  自分は何が楽しくて会社をやっているのだろうか?
  かけがえのない会社とは、いったいどんなものなのだろうか?


会社の存在意義にかかわる著者の大きな問いは、徐々に大きな答を導き、
  「安くて、おいしくて、サービスがよくて、雰囲気のいい焼き肉屋さん」
をめざす熱い「想い」がわきあがってきました。
1号店の開店、チェーン店化、妻の発病、株式上場とさまざまなドラマを演じながら、著者は成長していきます。
マーケティングの理論を学びんでいて、勘と熱意でやってきたことが結果的に理にかなっていたことを発見する場面も。


成長する人には感動があります。
著者から元気を分けてもらってください。