フン!


2004年8月刊  著者:いしいひさいち  出版社:徳間書店  価格:\630(税込)  159P


朝日新聞朝刊の4コマ漫画「ののちゃん」から誕生したコミックです。「ののちゃん」の登場人物で一番アイソのないポチを主人公にした本書は、どのページを開いても眉間にシワを寄せた不機嫌そうなポチが登場します。こんなにヒネたペットが主人公なのに、なぜかホンワカして、電車の中でもクスクス笑ってしまいました。いやぁ、いしいひさいちはエライ!


本書の真中には、「日々のポチ」というエッセイが載ってます。「春」「夏」「秋」「冬」の4編には、ポチと家族の不思議な距離感のある生活がポワ〜ンとした文章で描かれており、マンガの間の“箸休め”になっています。
本書の真中には、「日々のポチ」というエッセイが載ってます。「春」「夏」「秋」「冬」の4編には、ポチと家族の不思議な距離感のある生活がポワ〜ンとした文章で描かれており、マンガの間の“箸休め”になっています。
のの子のおばあちゃん「しげ」は、朝日新聞の朝刊でも偏屈ぶりを遺憾なく発揮しています。その偏屈な「しげ」が偏屈なポチを連れて歩く場面は秀逸です。「こうした散歩を通じてポチは人間と人間の世界に慣れた」と書いたあと、「そしておそらくしげも人なつっこい人間ではないが、こうやって長く人間と出会っていくうちに人間に慣れていったのだろう」と続けています。
おいおい、ポチも「しげ」も同じようなもんかい。と突っ込みを入れるまでもなく、山田一家は偏屈なポチ以上に変わりモノぞろいなのです。
ラ・ロシュフコーだのソポクレスだの、文末に古典の箴言を引用しているのも、もっともらしくて笑っちゃいました。


朝日新聞で紹介したら一時期在庫切れになってしまったそうですが、出版社もこのニヒルな主人公の売れ行きは予想外だったのでしょう。図書館派の私も11月10日の第3刷を買いました。630円の価値はあります。(これ、褒め言葉かな?)