女たち


著者:北野 武  出版社:ロッキング・オン  2008年9月刊  \1,680(税込)  229P


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北野監督の最新映画『アキレスと亀』の公開に合わせて出版された、北野武へのインタビュー集である。


おとといの「TVタックル」特番の最後で、たけし本人がこの本の宣伝をしているのを偶然見かけた。「俺もまだ読んでねぇんだよ」と冗談めかして言っていたのは、語り下ろしの原稿を自分でチェックなんかしていないぞ、という宣言だろう。
テレビに出演したとき編集結果なんか確認しないだろうし、たぶんオンエアをチェックしたりもしない。番組がどう作られるかは、ディレクターの編集しだい。インタビューだって同じなのだ。


書名が『女たち』というだけあって、たけしの女優観から語られる。
さすが映画監督。よく女優を見ているし、どの作品に出てくる女優も、決して曖昧な理由で選んでいないことが良く分かった。「本物のセックスを撮りたい」とか「セックスの前と後」などと、露骨にセックスに言及しているところはちょっと引いてしまうが……。


女の見方よりも面白かったのは、たけしの仕事観だ。
大学生のころ勤め人を目指すのをやめてしまった北野は、アルバイトで羽田の荷役やって過ごしていたそうだ。喫茶店バイトの10倍以上のカネを肉体労働で稼いでいた武から見ると、今のフリーターは仕事が甘い。楽な仕事なんかしてるからあんなこと(ネットカフェ難民)になるんだ、と言っている。
羽田の荷役よりもちゃっとした仕事がしたい、と選んだのが芸人だったらしい。どうせ俺なんかスタートからいい加減なもんだ、という韜晦術か。


いい加減なふりをしている武も、「常に寝ることに緊張感がある」と明かしている。ノートにお笑いのネタを書き忘れたんじゃないかと思うと、おちおち寝てられなくなったそうだ。
「前は、しょうがないから薬使っちゃってたんだよね」とか、「でも、おネエちゃんがいれば寝られるんだけど」とか、お笑い以外の人間が口にすると問題発言になりそうなことをさらりと言っている。


内容と直接関係はないが、この本、手にするとズシリと重い。写真集に使うような、良質の重い紙を使っているからだ。載っているすべての写真には、たけしがニコリともせずに写っている。テレビで見せるサービス精神旺盛なたけし、かぶり物を着けているたけしはここに登場しない。


男くささがムンムンする一冊だった。