上司は思いつきでものを言う

上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

思いつきでものを言う上司をメッタ切りにする痛快な本、……を期待していたのに、アレアレ〜?
そうだった。橋本治の本を読むときは注意してかからなければいけないことを忘れていた。「貧乏は正しい!」シリーズの核心だというので「ぼくらの資本論」を手にした時も同じだった。
ぼくらの資本論―貧乏は正しい! (小学館文庫)
身近な話題の中から、突然なんだか高尚そうなテーゼが提示され、「分かんないなら教えてやろう」とばかりに、ご高説が(まるでお説教のように)繰り返される。不思議と本を放り出す気にならず、最後のページまで引きずり回されて、コメカミに「?」マークを刻印されたような“ぽわ〜ん”とした読後感が残った。


今回も同じ。思いつきでものを言う上司をメッタ切りになんかしてくれない。上司というものはそういうものだ、その淵源は儒教伝来に遡り、聖徳太子の17条憲法の昔から……。橋本節は止まるところを知らない。本書でも「私には一つの欠点があります」「突然とんでもないことを引っ張り出して来て、とんでもなく簡単に要約してしまうことです」と言っている。
やっぱり橋本治は“くせもの”だった。そして、今回も最後まで付き合ってしまった。ということは「巻措くあたわず」の良書かも?