暇と退屈の倫理学


著者:國分 功一郎  出版社:太田出版  2015年3月刊  \1,296(税込)  437P


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前回からのつづき)

序章 「好きなこと」とは何か?


國分氏はイギリスの哲学者バートランドラッセ(1872-1970)が『幸福論』で述べていることを次のように紹介している。

いまの西欧諸国の若者たちは自分の才能を発揮する機会が得られないために不幸に陥りがちである。それに対し、東洋諸国ではそういうことはない。また共産主義革命が進行中のロシアでは、若者は世界中のどこよりも幸せであろう。なぜならそこには創造するべき新世界があるから……。


西洋諸国は豊かで良い状態になった。もう新しく作り上げなければならない新世界などないから若者たちは不幸だ。逆に、いま悲惨な状態にいる東洋諸国やロシアは、若者たちが立ち上がって努力すべき課題がのこされている。だから、そこに住む若者たちは幸福だ、と言っているのだ。


人類は豊かさを目指してきたというのに、「達成した豊かさが若者を不幸にする」というのは、おかしくないか? と國分氏は疑問をなげかける。


國分氏は「なぜ人類は豊かさを喜べないのか?」という問いを軸にして考えをめぐらしていくらしい。「人生に飽きない」というぼくの人生テーマにかかわってくれば嬉しいが、さてどうなることか。


國分氏は自分の考えを整理するためにさまざまな先人たちの言葉を引用しているが、ぼくは学者じゃないので、ジョン・ガルブレイスイマヌエル・カントたちの名前は気にせず、「何を」言ったのかに注目して読んでいくことにする。


次回につづく)