副題:父と娘がガチでトークしました
著者:中山 順司 出版社:泰文堂 2014年5月刊 \1,296(税込) 319P
40代前半の著者が中学1年生の娘と「ガチでトーク」した内容をまとめた本である。
小学校時代は娘とよく会話をしていた著者の中山氏は、中学生になった娘と急に接点がなくなってしまった。
会話はパパからの一方通行のみ。娘は、「うん」、「べつに」、「フツー」という気のない返事しかしない。
イラッとしたパパが、「フツーじゃわからん。どういうことかちゃんと説明しなさい」と言うと、プイッと席を立ってしまう始末だ。
あんまり話かけるから反発されるのかもしれない、と思い、意図的に話しかける回数を減らしてみたが効果はない。
かまってもダメ、かまわないでもダメ。いったいどうすりゃいいんだ! と中山氏は途方にくれた。
そんなある日、娘と2人でコンビニに行った帰り道で、ボソッと「お父さん、アタシ告白されたんだ」と打ち明けられる。
パパと話すことを避けていると思っていた娘が、こんな大事な話を突然してきたのはなぜなのか?
理由を尋ねたところ、「お父さんは、冷静に話を聞いてくれると思ったから」とのこと。
意外や意外。けっこう尊敬されているのかもしれない。
気をよくした中山氏が、とっさに、「突拍子もない提案だが、普段話さないようなことを、二人でぶっちゃけて会話してみないか? たとえば、土曜の朝に外で食事をしながらはどうだろう」と提案してみたところ、娘は「いいよ」と即答。
こうして、娘とパパが毎週さまざまな話題を語り合う「マジトーク」がスタートした。
せっかくなので、「マジトーク」の内容を著者のブログで公開してみたところ、第2回目の「お父さんがキモい理由を説明するね」が大反響を呼んだ。
アクセス数が2日間で100万PVを越え、累計で126万PVに達するヒット記事になってしまった。
出版社がこのヒット記事を見逃すはずはない。父と娘のマジトーク記事10本のほかに、新たに「父と娘と妻のマジトーク」2本、「娘とおじいちゃんのマジトーク」3本の追加対談を加えて書籍化されたのが本書である。
中山氏が選んだ「ふだんは話さないような大きめのテーマ」は、次のとおり。
父と娘のマジトーク
- 恋愛について
- 父がキモい理由
- 夢と目標
- 長所と短所
- 芸能界入りについて
- 英語と留学について
- 友情について
- いじめについて
- 生きる意味について
父と娘と妻のマジトーク
- “正しい彼氏の見つけ方”について
- “後悔”について
娘とおじいちゃんのマジトーク
- 家系について
- 後悔について
- 死について
娘とのマジトークは、けっこう厳しい。
よせばいいのに、「たとえば海外転勤でパパと離ればなれになるとして、どれだけ離れていても大丈夫か」、と質問した結果、「お父さんが死ぬのはダメで悲しいけど、三年間離れて暮らすのは苦にはならない程度の存在」という現実をつきつけられて中山氏はショックを受ける。
いっぽうで、娘が真剣に人生に向き合い、自分なりの考え方を持っていることに感心したりもするが、照れかくしもあってか、「しかし、相変わらずマジメな答えだね」とチャチャを入れたりもする。
同じ中1の娘を持つパパとして、娘と正面から向き合おうとする中山氏に共感したり、「へぇ〜、13歳の女の子って、こんなこと考えているんだ」と感心したりしながら、あっという間に読み終えてしまった。
ただし、中山氏の“キモさ”には共感できなかった。
愛情の深さ、強さは目に見えないものだから、娘に対する中山氏の愛情の深さが世の中の他のパパ族と比べてどれくらい深いかは分からない。
ただ、中山氏の愛情表現の激しさは、ハンパない。間違いなく「異常」の領域に足を踏みいれている。
たとえば、娘の布団に潜り込んで添い寝したり、寝顔にキスしたり、登校途中の通学路で激しく手を振って見送ったりする。
しかも、娘から、
「変態オヤジめ……次やったら、殺す(怒)」
と怒られ、妻には、
「いくら我が娘とはいえ、あなたの可愛がり方は異常だ。世界広しといえど、そこまで激しく愛情をかける父親はいない。あなたは、精神が狂った変態である可能性が高い」
とまで言われているのに、
「私程度の可愛がり方など、ごく平均点で(中略)私はどこにでもいるありふれた娘大好きパパに過ぎません。妻は何もわかっていません」
と反論する始末である。
あぁ、同じ中1の娘を持つパパとして恥ずかしい……。
世のパパ族の風上にもおけない、無自覚ぶりではないか!
中山氏は、決してパパ族の代表ではないことをお断りし、その上で、中学生の娘を持つ父親すべてに本書をお勧めする。
ママは読んじゃダメだからね〜!