職業、ブックライター。


副題:毎月1冊10万字書く私の方法
著者:上阪 徹  出版社:講談社  2013年11月刊  \1,620(税込)  229P


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今年に入って、レビューを1本しか書いていない。


よし、ブログ再会するぞ! と決めた最初の1冊は、「毎月10万字書く」と豪語している上坂氏の本を取りあげることにした。


本のタイトルにしているくらいだから、文章を書くことを仕事にしている人にとって毎月10万字書くというのはすごいことなのだろう、……と思いきや、文字数だけなら上には上がいる。佐々木俊尚氏は2009年に『ひと月15万字書く私の方法』という本を出版しているし、イケダハヤト氏は2013年6月に出した『武器としての書く技術』のなかで、「ぼくは月に40万文字を書き続け」と書いている。


なーんだ、イケダハヤト氏の4分の1か。……と単純に比べてもしかたない。イケダ氏はブログに記事をアップし、閲覧回数を増やすことによってプロのブロガーとして収入を得ているから、ともかく大量の記事を書くことが求められる。しかも、編集担当者や校正担当者といっしょに文章を直す過程を省略している。
かたや、上阪氏が書いているのは、インタビューなどの取材資料を揃えないと書けない書籍原稿である。題材を整える時間のほうが多いことを考えると、「毎月1冊」の書籍というのは、驚異的な生産量なのである。


上阪氏は、「ブックライター」という耳慣れない仕事をしている。
ブックライターとはどんな仕事なのかを説明するために、上阪氏は次のように書いている。

年に一〇冊近くは、他の著者の方の本の執筆を代行しています。(中略)著名な方々の著書を、著者に代わって書く。中心になるのは、ビジネス書やノンフィクション、実用書です。(中略)多くの場合で、十数時間、じっくりとインタビューをさせていただいて、本の形に仕上げていきます。


一般的には、「フリーライター」、「ゴーストライター」という職業名になるのかもしれないが、上阪氏にはこの2つの呼称がしっくりこない。代わりに考えついたのが「ブックライター」という呼び方だ。


本書で上阪氏が伝えたかったのは、ブックライターとは、どんな仕事をするのか。どんな魅力があるのか。本はどのように作っていけばいいのか、ということだ。


第1章では、「旬の女優さんが澄んだ瞳で見つめてくれる」とか、「仕事場は自宅、あえて高級住宅地に住む」など、ブックライターになって良かったことを並べている。ブックライターは決してフリーライターでもフリーターでもないことを強調しているのだ。


「第2章 ブックライターのお仕事のパートナー」で、出版社・編集者との関係作りについて書いたあと、いよいよ仕事の内容や工夫していることを述べる。
「第3章 素材が七割、書くのが三割」、「第4章 「二五〇枚を一本」ではなく「五枚を五〇本」、「第5章 毎月すらすら書く技術」で、それぞれ企画と取材、目次の作り方、書き方と時間管理について、ブックライターの仕事の仕方を紹介している。


上阪氏が大切にしているのは、“相場”を理解することだ。たとえば税務に関する本を書くとき、上阪氏は書店に足を運んで、どんな本が売れているか、どんな本が平積みになっているか確かめるという。
同じ税務に関する本でも、いろいろな切り口の本が出版されているなかで、新しい切り口で本を書こうとするからには、今どんな切り口の本がそこにあるのか分かっていなければならない。これを上阪氏は「“相場”を理解する」という独自の言い回しで表現した。


また、目次の作り方の実例として藤原和博著『坂の上の坂』を例に挙げている。目次の作り方もおもしろいが、実名で著者を明かしているのもおもしろい。目次作りの実例として紹介したい、という上阪氏の申し出に、藤原氏がこころよく応じたこと自体に感心してしまう。
藤原氏は目次の作り方だけでなく、書名と著者名をむしろ明らかにしてほしいと要望したそうだ。なんと太っ腹な御仁だろう。ライターに本作りを手伝ってもらったとしても、書いてある内容は、間違いなく自分の経験を元にしている、という自負があるに違いない。


「第6章 ブックライターとして生きていくには」で、ライターとして編集者にアピールする方法や、著者から信頼を得る方法をアドバイスし、「こういう人なら今すぐブックライターになれる」と、同業者になるかもしれない読者にエールを送って本書を終えている。


以上、ここまで1763文字を2日間で書いた。
毎日このペースで書いたとすると、月に2万6千字という計算になる。


上阪氏が「多い方」であることを考えると、なかなかいい文字数だ。毎日このペースで書き続けられれば、だが……。