脱会議


副題:今日からできる! 仕事革命
著者:横山 信弘  出版社:日経BP社  2012年4月刊  \1,365(税込)  195P


脱会議 今日からできる! 仕事革命    ご購入は、こちらから


2005年に大橋禅太郎著『すごい会議』を読んだ。ヤフー!、アップル等で採用している革新的な会議方法を紹介していた。(2005年8月の読書ノート参照)
2008年に清宮普美代著『質問会議』を読んだ。キリンビールも採用したという、いっぷう変わった「質問と答えだけで進行していく会議」を提唱していた。(2008年12月の読書ノート参照)


どちらも画期的な会議の方法を教えてくれたが、本書に比べれば、まだまだ手ぬるい。


なにしろ、「脱会議」なのだ。
ムダな会議は、いくらやり方を工夫してもダメ! ともかく、会議を減らしてしまえ! という過激な主張を展開する、破壊的イノベーション? を提案している一書だ。




会議というものは、時間ばかり食って何も成果を上げないものが多い。だから、会議の「数」と「時間」と「参加者」の1/2にカットして、会議コストを90%削減しよう! というのが著者の横山氏の主張である。


会議はムダが多い、という横山氏の意見に異議のある人は少ないと思う。しかし、僕の思いうかべた会議のムダは、横山氏の経験に比べると、まだまだ甘かった。横山氏は強烈なムダ会議を山ほど目撃しているのだ。
特に、横山氏が「人生最悪の会議」と名づけた会議はひどい! こんな会議を経験した人は、たぶんいない、と思ってしまうくらいひどい!
どんな「ひどい」会議だったかというと……。


午後4時ころ、「すぐ終わるから」と上司が横山氏を会議室に連れ込んだ。
明日までに提案書を作らなくてはならないから、議論に加わってほしい。そう言い残して上司は別の会議へ行ってしまった。
分煙という考え方もない時代のこと。室内がタバコの煙で曇るなか、情報共有、意見交換、議論がはじまったのだが、会議参加者は顧客の声を直接きいたことがないようで、ああでもない、こうでもないと推測で発言している。


「だいたい、あの会社の部門長は何を考えているかわからない」などと、ボヤキや雑談に脱線し、30分経ってからやっと本題に戻るという繰り返しで、話が前に進まない。


4時間が経過し、夜8時ころに「オレにも、聞かせろ」と営業部長が顔を出した。
いままでの経緯を1時間かけて説明させたあと、「ま、一発、デカイ提案してくれや」と言い置いて部長は去っていく。


その後も議論がつづき、「もういい加減にしてくれ」と心の中で叫んでいたところ、夜10時半ころ、一杯ひっかけた部課長3人が「なーにやってんのぉ」と乱入してきた。好き勝手に発言されたあと、予想どおり、「あとはお前がみんなの意見を参考にして、うまくまとめてくれればいいから」と丸投げされ、ともかく夜中の12時すぎに会議は終わった。


これだけでも、そうとう「ひどい」会議だが、まだ続きがあった。
自分の席で資料を作りはじめたところ、8時間前に「すぐ終わるから」と会議室に横山氏を引き込んだ上司が、ほかの会議を終えてもどってきた。
「結局、どうなった?」と聞かれて、自分が1人で考えることになった、と報告すると、「そんなんじゃダメだろう!」とどなった。


そこから、また会議再開。横山氏と上司と、たまたま残っていた担当者を含めた3人の会議は、深夜0時半から2時間続いたそうだ。午前3時前に終了し、それから朝6時まで資料を作ったそうだが、結局、クオリティの低い「やっつけ仕事」になってしまった、とのこと。
人が入れ替わりやってきて、10時間も会議に拘束されれば、ろくな提案書ができないのは当たりまえだ。


いやはや、これは会議“地獄”だ。


この地獄を抜け出すには、「会議のやり方を改善する」なんて悠長なことを言っていてはいけない。
ともかく、会議をやめよう! どうしても必要なものだけ会議というスタイルを残し、それ以外は、いままで会議でやっていたことを、別のやり方に変えてしまおう。


これが「脱会議」である。


具体的に、どうやって会議を減らすのか、代りに何をすれば良いのか。
詳しくは本書を読んでいただくとして、やはり、脱会議の第一歩は、現在行われている会議をすべてリストアップすることから始まる、とのこと。


会議の名前、目的、頻度、参加人数を書きだしてみる。
重要度はあとで検討するとして、書きだした会議にかかる人件費を算出してみると、惰性でやっていた会議のコストの多さに驚くそうだ。


年間休日120日の会社で、平均年収600万円のメンバーが参加しているとすると、1人あたりのコストは、1分50円になる。10人で1時間の会議をすれば、3万円。この会議が月に2回の定例会だったら、1年間で24回となり、合計72万円のコストだ。


このほか、会議自体の人件費のほか、資料作りの時間と人件費、会議室の賃料、照明、空調費まで考えると、会議の総コストは単純人件費の約2倍になるそうだ。


「今日からできる!」を信じて、まずは読んでみよう。
本書を管理者が読めば、実際に会議を減らして業績が上がるに違いないし、会議を減らす権限のない担当者も、「この本に出てくるひどい実例に比べれば、まだ自分の職場はまともかもしれない」と、忍耐力が増す効果がある。きっと……。