13歳からの反社会学


著者:パオロ・マッツァリーノ  出版社:角川書店   2010年9月刊  \1,470(税込)  2846P


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人を喰った作者が書いた、人を喰った本である。


まず作者。
自称イタリア生まれでパオロ・マッツァリーノという名前なので、ついイタリア人と思ってしまうが、どうもコテコテの日本人らしい。


つぎに題名。
7万部以上も売れたあのベストセラー、宮台真司著『14歳からの社会学』をあきらかにパクッたタイトルだ。しかも、「14歳」を「13歳」にちょこっとだけ変えるという姑息なアレンジを加えている。


もうひとつ、装丁。
パオロ・マッツァリーノ著『日本列島プチ改造論』と本の大きさも表紙の色合いも同じである。


日本列島プチ改造論    ご購入は、こちらから



同じ著者なら構わないようにも思うが、『日本列島プチ改造論』の版元は大和書房で、今回の『13歳からの反社会学』は角川書店から出している。
出版社が違うのだから、本の雰囲気も変えるのがエチケットというものではないか。



――とまあ、パクリ疑惑は感じるものの、内容のコンセプトはしっかりしている。


世の中にあふれる情報に振りまわされないよう、ちょっと斜めから情報を判別する見方を身につけよう。13歳の愛美さん、留吉くんに相の手を入れてもらいながら、社会や情報をおもしろく見るためのヒントを教えるよ。
きみたちも、ぜひ、おもしろいオトナになってね!


「はじめに」でパオロ氏が明かした考え方にしたがって、13歳あいての講義がはじまる。


言葉づかいはやさしそうだが、第1章からしてデータと歴史を駆使することをおしえているから、内容はけっこう高度だ。
大人が読んでちょうど良い「メディアリテラシー入門書」といったところか。


パオロ氏の反骨精神がチクチクと語られるのが「知識と教養はどう違う」という愛美さんの質問への答えだ。


まず、

  専門家が、自分が広めたい学説や自分にとって都合のいい知識に「教養」
  とラベルを貼って、これは教養だからおぼえなければいけないよ、疑っ
  てはいけないよ、と押し売りをしてるだけのことも多いんです。

とジャブをくり出したあと、

  要するに、教養は秀才たちのミエの道具ってことですね。まあ、私が見た
  ところでは、こどものころから勉強ばかりしてた受験秀才は、他になんの
  才能もないので、教養というミエにすがりつくしかないのではという気も
  しますけど。

とバッサリ切り捨てた。


いやぁ、痛快、痛快。……と笑ってばかりもいられない。


第5章の「13歳からのレビュー入門」では、レビュアーに矛先を向けた。


「こどものころ、読書感想文が好きなんて人はめったにいません。なのにオトナになると、頼まれもしないのにレビューを書きたがるようになるんです」


と、マクラを振ったあとの次の言葉が強烈だった。

  人間は、自慢したがるいきものなんです。自慢せずにはいられません。
  (中略)
  本当はみんな、なれるものなら、作家やミュージシャンや映画監督に
  なって、クリエイティブな才能を自慢したい。賞を獲ったりベストセ
  ラーやヒットを連発して、すごい自慢をしてみたい。
   しかし、そうなれるほどの才能はない。なろうと努力をする気もない。
  だけど、自分の知性と感性にはいささか自信があるので、ちょっと自慢
  したい、だから次善の策として、あまり努力しなくても書けるレビュー
  で、プチ自慢をするんです。ワタシこの本を(映画を音楽を)こんなふう
  に読めるのよ、読み解いちゃうのよ、すごいでしょ。とまあ、そんな
  ところでしょう。


う〜ん。
そういえば、僕も、師匠の橘川幸夫さんから「オリジナル作品を書くように」と何度もけしかけられている。


しかし、何もないところから作品を作るのは、パオロ氏の言うように大変なのだ。


だからといって、努力しないでレビューを書いているわけではない。それなりに、ウンウン唸りながら文章を工夫して書いているのだ。
パオロ氏のきめつけには反発を感じるが、レビュー対象あってのレビュアーであることも事実だ。
初心にもどって、レビュー対象の良きサポーターとなれるよう気をつけていこう、――と反省することにする。


最後に、パオロ氏らしいまとめの言葉を引用させていただく。

   この世にヒーローはいません。いるのはすべて偽善者だけ。もっと
  はっきりいってしまいましょう。オトナになるということは、おそれ
  ずに偽善をできるようになることなんです。
   だから、もっとも意外な、私の結論。
   偽善者になれ。
   (中略)愛は地球を救わない、と皮肉った人がいましたが、偽善は
  だれかを救ってます。愛より偽善。


本書を手に取り、含蓄のある、逆説的もの言いをお楽しみあれ。

参考レビュー


パオロ・マッツァリーノ著作レビュー