著者:美崎 栄一郎 出版社:ダイヤモンド社 2011年1月刊 \1,500(税込) 219P
著者の美崎さんは、ビジネス書新刊を3冊も同時発売した売れっ子作家だ。
少し前まで、ビジネス書の著者といえば、ベンチャー企業の社長とか、弁護士とか、公認会計士など、何か人と違うプロフィールを持っているものだった。
ところが、美崎さんはプロフィールのはじめに、
と書いてある。
現役サラリーマンなのだ。
ただし、美崎さん、ふつうのサラリーマンではない。
最初に出版した『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』は、仕事ができる人のノートの中身を公開する「ノート術」だったのだが、この本のプロフィールには、次のような活躍ぶりが書かれていた。
手がけた商品は、アタック、ニュービーズ、ワイドハイターなどの日用品から、化粧品のブランドであるレイシャス、ファインフィットまで幅広く、プロジェクトリーダーとして自社のリソースと他社とのコラボレーションを推進。
ニコンとの共同開発の多視点画像解析システムは、テレビや新聞などでも取り上げられた。
プライベートの活動でも、社外の社会人向けに勉強会や交流会を多数主催し、NHKをはじめ多くのテレビや雑誌、本などで紹介されている。
築地朝食会、山の手の会、misaki2.net cafeなどを開催することで、毎月のべ150名以上の社会人を集め、業務以外の情報交換により、仕事では直接関わりのない人たちで
1000名以上のゆるやかなネットワークが生まれている。
異業種でも多くの人脈を持っているため、いつのまにか「スーパーサラリーマン」と呼ばれるように。
結果を出すから「スーパーサラリーマン」なのだろう。2009年9月に出した初の書籍はベストセラーとなり、ビジネス書大賞でも1位に選ばれる。
「売れる」著者を求めている出版界は放っておかない。
翌年2月の『会社って楽しい? お金も時間もかけずに成長する方法』を皮切りに、2010年だけで6つの出版社から次々と新刊が出た。
明けて2011年も「スーパーサラリーマン」の快進撃はつづく。
1月19日に『iPadバカ タブレットにとり憑かれた男の究極の活用術』がアスコム社から、
そして、1月28日に本書『[書類・手帳・ノート・ノマド]の文具術』がダイヤモンド社から発売された。
本日は、この「スーパーサラリーマン」の最新刊を紹介させてもらう。
美崎さんは10冊目のテーマに「文具」を選んだ。
文具(カッコつけて言うとステイショナリー)は種類が多いのだが、ふつうのサラリーマンはオフィスの文具コーナーから、ありあわせのポストイットや、安物のボールペン、ラインマーカーを自分の机のひきだしに補充することが多いのではないだろうか。
僕の周囲でも、会社で支給される文具で間に合わせている人が多く、新しい文具を試してみる機会が少ない。
多くの仕事を効率よくこなしている「スーパーサラリーマン」は違う。
ちょっと変わった文具を使っているのはもちろん、クリアホルダーやポストイットのような一般的な文具も、ひと工夫して使いこんでいる。
いや、「使いこんでいる」というより、「使いたおしている」と言ったほうがいいかもしれない。
なにしろ、冒頭から「へ〜、こんな使い方できるんだぁ」という使い方ばかり紹介してあるのだ。
美崎さんの「使いたおし」の例として、クリアホルダーを見てみよう。
A4サイズホルダーが入ることをウリにするランドセルが登場するくらい、世の中の書類はA4サイズが多い。もちろん、仕事でA4クリアホルダーを使う人は多いはず。
資料を整理したり、大事な書類の角が折れないようにするためにクリアホルダーは便利なツールだが、単に書類を放りこんでおくだけだと、仕事が溜まりやすいことに注意! と美崎さんは警告する。
放っておくとクリアホルダーに入れた書類がどんどん増え、結局山積みになってしまうもの。
書類と仕事を溜めないために美崎さんが提案するのは、「アクティブ・クリアホルダー」という考え方だ。自分の処理できる量に合わせて、クリアホルダーの枚数を敢えて制限する方法である。
美崎さんの場合、クリアホルダーの枚数を10枚と決め、それ以上の仕事が入ってきたら、どれかを処理してクリアホルダーを空けてしまうか、どれかの優先順位をさげて「やらない」と決めるそうだ。
単なる文具として使うのではなく、仕事の量やフローをコントロールする道具として使うのがミソ。
ちょっと変わったクリアホルダーの使い方として、クリアホルダーをホワイトボードのように使う方法も載っていた。
ちょっとした打合やブレインストーミングで、ホワイトボードが手近にない場合は、ぺんてる社の「Handyホワイトボードマーカー」を使ってクリアホルダーに図やポンチ絵を書くと、ホワイトボードの代わりに使えるらしいのだ。
定番の文具ポストイットも、ちょっと珍しい品物を紹介したあと、ふつうのポストイットを「タスク管理」ツールとして使いこなす方法を教えてくれる。
やらなければならない仕事(タスク)がたまってきたら、いったんポストイット1枚に1件ずつ書き出してみる。
1時間ごとのきざみに合わせて貼ると一日のスケジュール管理になるし、時間軸を長くすれば1週間、1ヶ月を見とおすタスク管理に使える。
横軸が重要度、縦軸が緊急度を示す4分割マトリクスに貼ってみれば、重要度が高くて緊急度が大きいタスクが一目瞭然となるし、いつもあとまわしになってしまいがちな緊急度が小さいけど重要な仕事を意識することもできる。
ポストイットは簡単にはがせるから、別の場所に移動してみたり、軸を変えてみたりすると違った全体像が見渡せる。
精神的に煮詰まってきたときには、特に効果があるかもしれない。
他にも、変わった文具、ユニークな使い方がたくさん載っているのだが、読んでいるうちに、僕が使っているオススメ文具も紹介したくなったので、本書の内容紹介はここまでとさせていただく。
読んでいるうちに、「あっ、こんど使ってみよう!」という刺激をたくさん与えてくれた。仕事が楽しくなるのだから、自腹で文具を買うことも楽しくなりそう。
ここからは、美崎さんに刺激されて紹介したくなった僕の愛用品について書かせていただく。
一番お勧めしたいのは親指シフトキーボードなのだが、前にも激賞したことがあるので、今日は割愛。
とにかく入力が早い。
勝間和代さんなどビジネス系作家で使っている人も多く、川上徹也さんも親指シフト利用者であることを最近知ったことだけ紹介させていただく。
オススメ筆記用具を3種!
1本目は電子ボールペン。
ノートパソコンを持ち歩くのはちょっと面倒、という人にオススメしたいのが、ぺんてる社の「airpenMINI」だ。
専用ボールペンで書いた手書き文字を、紙をはさむクリップのような形の受信装置が記憶する。
付属ソフトウェアの文字認識機能を使って、あとでパソコンで手書き文字をテキスト化できるので、手書きメモをパソコン入力するツールとして重宝する。
通勤電車で原稿を書くときに愛用していたが、転勤で通勤電車に乗らなくなったので最近使っていないのが残念。
2本目は油性ボールペン。
アメニティグッズでもらうボールペンがどんどんたまってしまうが、書きやすいものにめったに巡りあわない。
朝の情報番組で、「ビクーニャ」はすらすら書きやすい、と紹介していたので試してみたところ、当たりだった。
本当に書きやすい。
なんでも、今までの油性ボールペンインキの約1/40の低粘度インキだそうで、「世界一のなめらかさ」という売り文句も納得してしまう。
ボールペンを最後まで使い切るという久しぶりの経験をして、変え芯(リフィル)を2本まとめて買った。
もう、もらいもののボールペンは使えない。
3本目は0.9ミリのシャープペン。
報道関係者が速記用に使うことを想定して30年以上前に開発されたという「プレスマンシャープペン」を持っている。僕のカミさんが速記者をしていた時に使っていたもので、折れにくく、長時間使っても疲れない。
「図解」で有名な久恒啓一氏も、著書のなかでこのシャープペンを愛用していることを誇らしげに書いてあり、持っている人をみかけると、「できるな」と親しみを持つらしい。
アマゾンでは1本もの(↓)
がなぜか品切れで、
いまは10本セット(↓)しか在庫が無い。
本の抜き書きをパソコンに打ちこむときに使うブックスタンド。
62ミリまでの書籍を挟み込み可能という、がっちりした「ELECOM EDH-004 ブックスタンド」を愛用している。
アマゾンのカスタマーレビューには80件のコメントが寄せられていて、ほとんどの人が絶賛している。
ひとつだけ難をいえば、新書や文庫本のようなサイズの小さな本をはさむと、本を押さえるフックが文字の一部を隠してしまって、キーボードから手を離して本を1行ぶん移動させなければならない。
そこで、文庫・新書用に買ったのが、「ブックメイト」という書見台。
両方を使い分けることで、イライラが少なくなった。
最後に、せっかく買ったのに使いこなしていない文具を2つ。
1つ目はKINGJIM 卓上メモ「mamemo(マメモ)」。
画面タッチですぐメモができる、シンプルな電子手書きメモだ。
最大99枚まで自動で保存され、電池交換を行ってもメモは消えない。書いたメモにToDo(アラーム)を設定することができるというので、職場で役に立ちそうに思って購入した。
残念ながら、ほとんど使っていない。
よく考えたら、今の仕事内容は、じっくり書類を作ることがメインなので、こまかい雑用がほとんどない。
自分の仕事内容をよく考えずに手を出したのが失敗だった。
ディズニーシーに遊びに行ったとき、フードコートのレジ係がレシート2枚をこの針なしステープラーで綴じているのを見たことがあった。
駅ビルの文具店で現物を見つけて実演をお願いしたところ、紙の2カ所に切り込みを入れ、折り込んで紙を綴じるところを見せてくれた。針を使わずに紙を閉じることができるという物珍しさに、思わず手を出した。
針を補給する必要がないし、「エコっぽいでしょ」と書類を渡せば、話題づくりになるかもしれないじゃないか。
――実際は、これも全く使っていない。
この「ハリナックス」、4枚しか綴じられないのだ。
僕の書類は20枚を超えることも多く、たいていダブルクリップで綴じている。ふつうのステープラーさえ使えないのに、4枚しか綴じられないツールが活躍する場面はやってこない。
トホホ……。