副題:クリック無間地獄に落ちた人々
著者:中川 淳一郎 出版社:講談社BIZ 2009年12月刊 \1,470(税込) 254P
2009年9月に『ウェブはバカと暇人のもの』という人目を引く新書が出た。
確かにそういう一面もあるかなぁ〜、と思ったが手に取ることはなかった。
同じ著者が、また『今ウェブは退化中ですが、何か?』と人を喰ったタイトルの本を出した。
副題の「クリック無間地獄に落ちた人々」に興味を引かれたので、今度は読んでみた。
すごい!
ここには、僕が近寄らないようにしている「2ちゃんねる」を主な舞台にして、匿名で誹謗中傷を書きまくる人々の実例がたくさん載っている。
目次からいくつか拾ってみよう。
第1章 今日も誰かがボコボコに叩かれている
・叩きまくられる有名人たち
・ブログのやんちゃ自慢で身元が暴かれた女子大生
・滝川クリステルと青木裕子の炎上騒動
・辻希美を嫉妬して叩く人たち
・「死ねよ豚野郎」「超頭悪そうwww」と罵倒第2章 いつまでも罵倒を続ける暇人と、常に可能性を説くネット教信者
・大バッシングされた筑紫、鳥越両氏
・異様なクレームの嵐第3章 ネットは芸能人とバカなファンのパラダイス
・檀れいとの結婚を妄想する男たち
・ダンプ松本と北斗晶のウケたネタ第4章 ネットの通説はウソばかり―「夢」と「煽り」に騙されるな
・「妹にオナニーを見られた時の反応」スレッド
・ミクシィの日記で取締役が辞任した会社
・「お客様は神様」を都合よく解釈するユーザーたち
・雑談のネタ投下記事にも怒りのコメント
・旅番組の出演者に「不倫か」とクレーム
・東大の学園祭が攻撃された
・
・
・
いやはや……。
インターネットのダークサイドとはいえ、これだけ並べられると、さすがに辟易する。
やっぱり匿名っていうのがいけないのかなぁ……。
なんて素人考えをしていたら、勝間和代氏と2ちゃんねるの元管理人ひろゆき氏の対談を見つけた。
⇒ 2ch ニュー速 Vip ブログ 5月03日 「勝間 VS ひろゆき 討論会 【ネットの匿名性】 【若者への起業促進】」
勝間氏が、
「私がやっているクロストークというコーナーでは、実名(ファースト
ネームとラストネーム)を明記するようにお願いしている」
と言うと、ひろゆき氏は、
「ファーストネームとラストネームを書いて誹謗中傷する人がいました。
でも結局書いた人が誰だか分かりませんでした、というのも問題じゃ
ないですか」
と返す。
2ちゃんねるだって、請求すれば最終的には誹謗中傷した人のIPアドレスをたどることができるのだから同じではないか、という論法だ。
いやいや、ネットの匿名性というのは奥が深い。
このトークを終えた勝間氏が書いたブログ(こちら)を覗いてみたら、コメントが700件以上載っていて、大半が批判的な意見だった。
これは、ミニ“炎上”だ!
本書の内容に戻ると、このネットの怖さ、不毛さに疲れ、あの梅田望夫さんも一種の引退宣言をしてしまったほどだという。
著者本人も前著に「バカと暇人」というタイトルをつけただけで、ボコボコに叩かれたそうだ。
ただし、著者の本業は企業向けにネットでの情報発信に関するコンサルティングやプランニングを行うことなので、ネットから目が離せない。
こんなヤツら、大っきらいだ! と思いながら、それでもネットに向きあわなければならない日々。
副題の「クリック無間地獄に落ちた人々」とは、著者本人だったのか。
著者は第5章を
「本当に大切な人も仕事も人生も、ネットにはない」
というタイトルにした。
ネットに深く付き合う以上、ある程度の心構えが必要であることを教える一書だった。
最後に、余談をもうひとつ。
湯川鶴章さんの TechWave に蜷川真夫著『ネットの炎上力』の書評を書いた。(書評はこちら)
著者の蜷川真夫氏は「J−CASTニュース」http://www.j-cast.com/ の発行人である。
2006年7月にJ−CASTニュースをスタートさせ、競争の激しいネット業界で多くのPV(ページ・ビュー)を獲得。経営的にも成功させている。
J−CASTニュースが注目されたのは、サイトの炎上ニュースを取り上げることが多かったからだそうだ。
カスみたいなニュースを取り上げている、これじゃ「J−CAST」じゃなく「Jカス」だ、と非難されたこともありましたが、著者は、
「私自身は気に入っている。愛称とさえ思っている。カスで結構」
と開きなおっていた。
そんなJ−CASTニュースも、まだ「勝間 VS ひろゆき」騒動を取り上げていないようだ。(5月04日 09:15 現在)
まだホヤホヤだからなのか。
それとも、取り上げる価値のないニュースなのかなぁ……。