著者:橘川 幸夫 出版社:バジリコ 2010年1月刊 \1,260(税込) 174P
承前。
橘川幸夫のスゴイところ―その2
2007年の秋に、橘川さんはリアルテキスト塾とは別に「林塾」という塾をスタートさせた。
「林塾」というのは、日本未来学会の会長で、フィランソロピー(社会貢献)の第一人者でもある林雄二郎氏を囲む会で、「木を見て森を見ず」という偏狭なものの見方を排する意図から、橘川さんは「森を見る会」という別名でも呼んでいた。
私もメンバーに加えてもらい、橘川さんが尊敬する先生とはどんな方なのか、直接話を聞かせていただくことができた。
年が明け、「分科会」メーリングリストを作って林さんのお話しの内容を議論することになり、リクルートをスピンアウトして個人事務所を開いている信國乾一郎さんという方が座長になった。
ジグムント・バウマンだの、資本の流動性だの、国家もまたfunctional community化するだの、難しい言葉が飛び交うメーリングリストだった。
せっかくの機会と思い、難しい話にも首を突っ込んだ僕だったが、顔を合わせずに抽象的議論をすることに慣れていなかった。何度か発言している間に、座長の信國さんに挑戦的な言葉を投げつけるようになってしまった。議論が膠着する原因が自分にあることにうすうす気づきながらも、失礼なもの言いをやめられない。
とうとう、「君とはもう議論しない」という趣旨のメールを信國さんから受け取り、ハッとした。
やってしまった……。橘川さんの主催する会で2、3回会っただけの人に、なんと失礼なことをしてしまったのだろう。
どうしたら良いものかと考えているうちに、『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』の感想を ブログに書いたとき、橘川さんの次の言葉を引用したことを思い出した。
友だちの友だちは、赤の他人に決まってる。
1対1の関係をなめないように。
そうだ。橘川さんを通じての知りあいということに甘えてしまったんだ。
橘川さんの本に載っていたのは、まるでこの日を予想していたみたいだ。
反省の気持ちをこめ、素直にお詫びのメールを書いたところ、信國さんは「ごめんなさい、が素直に言える社会はよい社会(笑)」と返信をくれた。
それまで何も発言していなかった橘川さんが、このタイミングでメーリングリストに短いメッセージを書いてくれた。
一人一人との関係が、ますます大事になってくること。
一対一の関係を、しっかり紡いでいくしか、国境の問題も解決つかないこと。
一人一人と仲良くなって、その範囲を広げていきたいということ。
橘川さんのメッセージを読みながら、まるでお釈迦さまの手のひらで飛び回っている孫悟空のような気がした。橘川さん、スゴすぎ!