理想の会社


副題:毎日、社員が感動して涙を流す
著者:福島 正伸  出版社:きこ書房  2009年11月刊  \1,365(税込)  174P


毎日、社員が感動して涙を流す 理想の会社    購入する際は、こちらから


私のメンターの一人、松山真之助さんから福島正伸さんの著書『メンタリング・マネジメント』を贈っていただいたのは、4年前のことです。


松山さんは不思議な人です。
大企業の管理職を務めながら、1日1冊書評を書くなんてすごいことをやっていて、ここ数年も“MOSO”という、荒唐無稽な発想を楽しみながら、ときどき本当に実現してしまうという軽やかな活動を推進しておられます。


私が松山さんと親しくなって、ネットで書きためた書評を本にしたいと相談した
とき、次のように激励していただきました。

  「出版企画を持って、まず100社に当たってみて下さい。
   もし、100社に断られたら、ボクのところに来てください。
   次の100社に当たるように励ましてあげます」


はんぶん冗談のように聞こえましたが、心に強く残る言葉でした。
半年後に本当に商業出版デビューできたのは、この励ましのほか、折にふれて松山さんに相談に乗っていただいたおかげです。
あとで分かったことですが、この励まし方には福島正伸さんと共通するエネルギーがありました。


今日の1冊は、松山さんからの贈本で知り、松山さんの励まし方で知った
“福島流、人を元気にする方法”の集大成を取りあげます。


福島正伸さんは、社会に出てすぐに会社をつくりました。
事業が軌道に乗ってきたころ、福島さんは経営者としての行き詰まりに悩んでしまいました。


社員がついてこない。意見を言わない。
やっとホンネを引き出したら、「社長は会社のこと、利益のことしか考えていない」と言われる。


悩みに悩んで気づいたのは、自分自身が感謝を忘れていたのではないか、ということです。


はたらいてくれる社員への感謝を忘れ、すべての責任を負っている自分こそ感謝してもらいたいと思っていたことに思い当たった福島さんは、まず自分の行動を変えることにしました。


社員が会社に来てくれたことに感謝。
コピーをとってくれたら感謝。
そもそも一緒に仕事ができるだけで感謝。


経営学人間学として、根本的なところから考えていくようにした結果、なんと社員からも、感謝の言葉をかけられるようになったとのこと。


その他、多くの組織活性化、地域活性化支援をてがけ、多くのドラマと出会ってきた経験から、福島さんは、高い目標をかかげることの大切さを痛感しました。


会社でいえば、“理想の会社”を思い描き、その理想に向かうことで会社は発展するし、はたらいている人も幸せになっていく。


理想の会社を具体的にイメージするため、福島さんは本書の第2部で「理想の会社」の物語を公開しました。


福島さんが理想とする会社とは、どんな会社だろう?


ワクワクして読みはじめた私は、途中で笑い出してしまいました。


主人公の佐藤が、朝起きるとき妻に「日本を変えるために目が覚めたよ」と挨拶するところから既に“おかしい”のですが、会社に着けば着いたで、社員同士がお互いに握手しながら「今日一日を、人生最高の一日にします」と笑顔で語っています。


会社の活動も、顧客満足(CS)の上を行く、TS(トータル・サティスファクション)を目指していて、顧客だけではなく社員や家族、地域、日本、さらには地球のすべてを満足させる活動に力を入れているのです。


社員どうしの協力姿勢も徹底していて、1日のうち30分を他のメンバーに尽くすことが業務の一環になっています。


たまたま佐藤が乗ったタクシーは、日本一お客様に喜んでいただけるタクシー会社を目指して信じられないようなサービスを提供してくれる。


はっきり言って、出来すぎです。
こんな前向きな社員は不自然ですし、こんな会社ありえません。


でも、私が笑ってしまったのは、物語が荒唐無稽に見えたからではありません。
あり得ないように見えることを軽々とやってのける登場人物が、本当に楽しそうに見えたからです。


だって、主人公は飼い猫のナナにまで、
  「おまえは日本のことを考えて、僕よりも早く起きていたのか」
と問いかけていて、おまけにナナは無視して食べ続けているんですよ。


小林まことの漫画『What's Michael?』(ホワッツ マイケル?)に出てきそうなこのシーンに象徴されるように、福島さんの物語は、同じ小林まことのデビュー作『1・2の三四郎』と通じるものがあります。


『1・2の三四郎』といっても知らない方も多いと思いますが、この作品は約30年前に少年マガジンに連載していた学園コメディです。


主人公の三四郎が次々とラグビー、柔道、プロレスで活躍していきます。あくまでマンガですので“ありえない”ような活躍を見せるのですが、さらにもう一昔のヒーローと違ってちっとも格好よくない。
「ひえ〜、たいへんだあ〜」とドタバタしながら、いつの間にか軽々と難関を乗り越えてしまうのですが、その過程にまったく悲壮感がなく実に楽しそうでした。


福島さんも確信犯的に“ありえない”物語りを書いています。


たとえば、「顧客だけではなく社員や家族、地域、日本、さらには地球のすべてを満足させる」と決めたら、何もこわいものはないし、目の前の障害なんて些末なことに見えてくる。
だから、仕事も生きることも楽しくなるに決まってます。


また、グーグルが20%ルール(仕事時間の20%は、会社から命じられた業務ではなく、自分のやりたい研究に充てる)を奨励するのが有名になりましたが、1日のうち30分を他のメンバーに尽くすという「30分ルール」のほうが、はたらく幸せに直結していることは間違いありません。


本書の第3部では、この物語が、実は実際にあった話を組み合わせてできていることが明かされ、どうやって「理想の会社」のイメージを明確にするかを解説してくれます。


福島さんの情熱に感化する人は多く、本書の「あとがき」でも、ある自動車学校の経営者がイメージした「理想の会社」を紹介しています。


本文で笑った私は、最後のさいごでウルッときました。


福島正伸がいちばん書きたかった本。
私からもお勧めです。

ところで……


前回の書き込みから10日も空いてしまい、申し訳ありません。
間があいてしまった理由は、腰の激痛のためです。


5年前に慢性の腰痛になったあと、しばらく良好な状態が続いていたのですが、この8月にぶり返してしまいました。


だましだまし暮らしていたのですが、前回書評をアップした次の土曜日に、激痛に見舞われます。
腰の状態が悪化した直接の原因は、片道約100キロの道のりを自動車で往復したことです。体を固定したまま、右足を浮かせつづける姿勢が良くなかったのでしょう。


この5年間お世話になっている整体師の先生に、2日に1度のペースで治療してもらっています。


「体をまっすぐに矯正し、背骨をきれいなS字にすれば腰痛も首の痛みも治る!」という信念を持ち、実際に私の腰痛を劇的に治してくた“ゴッドハンド”先生です。


でも、今回はなかなか効果が現われません。
ともかく痛まないようにするために、毎日、家に帰ったら横になって過ごしています。


カミさんには申し訳ありませんが、食器洗いはお休み。
パソコンデスクに座るなんてもってのほかです。


うつぶせならやっと大丈夫になってきたので、遅いノートパソコンで久しぶりに書評を書きました。

しばらく、週2回のペースが守れないかもしれませんが、ご理解・ご容赦ください。