副題:出会い、そして再生へ
著者:高森 明, 木下 千紗子, 南雲 明彦, 高橋 今日子, 橙山 緑,
片岡 麻実, 鈴木 大知, アハメッド 敦子
出版社:ぶどう社 2008年12月刊 \1,785(税込) 175P
ときどき聞くようになったとはいえ、あまりよく知らない「発達障害」についておしえてくれる一書です。
私が参加している「すごい100冊倶楽部」というメーリングリストで知り合った本仲間に教えていただきました。
障がい者の生きづらさを詳しく知ろうとするのは、勇気のいることです。
知らずに過ごしていれば、何か障がい者を支援する行動を起こす必要もありませんし、行動を起こすことのできない自分を責めてしまうこともありません。
ですから、小さなことでも何か社会にプラスになることをしたい、と思っている人ほど、障がい者について書かれた本を敬遠してしまうものです。
安心してください。
本書は、障がいを持っていないあなたに向かって、何か行動するように駆りたてたり、責めたりする本ではありません。
当事者が障がいをどう感じているのか、どんなふうに障がいに気づき、いまどんなふうに暮らしているのか。
一人ひとり具体的な体験を語り、同じ障がいを持つ仲間に「障がいと等身大に付き合いながら生きていこう」と語りかけている一書です。
まずは同じ障がいを持つ人にメッセージを送るのがメインで、次に、家族や支援者に支援のヒントを伝えるのが目的です。
第3者は、こういう障がいを抱えている人がいることを理解することから始めればよいのであって、すぐに何か行動せよと責めたりしていません。
本書の共著者8人で、そのうち、7人が発達障害と「出会った」体験を詳しく語っています。
もちろん、「出会う」前も発達障害の症状があらわれていたのですが、発達障害は外見からは「目に見えない障がい」なので、本人も気づきません。
子どものころから病名のついている早期診断者に対し、大人になってやっと病名のついた人を「中途診断者」と呼ぶそうです。
本書を教えてくれた片岡麻実さんのように、はじめにうつ病と診断されたあと、アダルトチルドレン的要素が強いと言われたり、躁うつ病、ADHD、再びうつ病と、病名がコロコロ変わった例もあります。
片岡さんは、やっと行きついた発達障害の専門クリニックで、
自閉的な傾向があるADD(不注意優勢型ADHD)と、視覚認知面のLD
と診断され、副作用の少ない薬を処方してもらったおかげで、人ごみにいても平気でいられるようになりました。
中途診断者は、何かしら人並みにできないことを持っていますので、子どものころから「あいつはおかしい」といじめられます。
学校を出ても就職に苦労し、やっと入った職場でもいじめられる。
サバイバルという言葉がおおげさではないくらいの生きづらさを乗りこえ、著者たちは、自分なりの得意分野を見つけ、人生を楽しむことを実現していきます。
片岡さんも、自分にあった仕事をみつけ、ついでにパートナー(結婚相手)も見つけ、とうとう起業して個人事業主として独立しました。
他の共著者も、副題の「出会い、そして再生へ」が示すように、発達障害という同伴者と折り合いをつけ、うまくやっていく道を見つけています。
良かった……、とホッとさせてくれます。
そして、
「こんど発達障害の人に出会ったら、あまり大げさじゃないサポートをしてみよう」
と小さな勇気を与えてくれます。
社会にはいろんな人がいることを、ほんの少し覗いてみませんか。