副題:感謝と恩返しと少しの勇気
著者:西田 文郎 出版社:現代書林 2008年11月刊 \1,575(税込) 170P
生き方の「核」について問いかける本です。
野口嘉則さんの『鏡の法則』以降、この種の本は「○○の法則」というタイトルを付けるという出版界の“お約束”があるようで、本書の題名もこの慣例にならっているように見えます。
しかし、著者の西田さんは、「法則本」業界の新人ライターではありません。
プロフィールに「日本におけるイメージトレーニング研究・指導のパイオニア」とある通り、ビジネスマンやスポーツマンにメンタルトレーニングを施し、成功に導いた実績を多数持っておられます。
北京五輪で金メダルを獲得した日本女子ソフトボールチームに指導したのも西田さんとのこと。
メンタルトレーニング関係の著書も多く、私の2004年の読書ノートで、西田さんの『人生の目的が見つかる魔法の杖』を取り上げたことがあります。そんな「人をやる気にさせる」経験が豊富な西田さんが本書で示した「10人の法則」とは何か?
――要約してお伝えしようとも考えたのですが、やめておきます。
充実した人生を送るために西田さんが教えてくれるのは、決して目新しいことではありません。ですから、結論だけをお伝えしても陳腐に聞こえてしまい、もったいない、と思ったからです。
当たり前でとても大切なことを、「あ、分った分った」と軽んじてしまう性癖を私たちは持っています。その大切なことを再発見させるために、西田さんは容赦のない、きつい言葉遣いをしています。
たとえば、たいへんな苦境を乗りこえたある人のエピソード。
転機となったのが家族への感謝だったことを示したあと、西田さんはこう書いています。
ここで「なんだ、家族の話か」と思うひとがいたら、あなたは間違いなく
(中略)思い上がった人間の1人です。(中略)ちょっとばかりの成功で
いい気になり、「天狗になり、地位や名誉という鎧で自分をおおい、自分
勝手で、家族のことなど眼中になく、家のことも、子どものこともすべて
妻に任せきり。それで、仕事を口実に飲み歩いている」ような、図に乗っ
た人間に決まっています。
西田さんがこんなに厳しく読者を叱責するのは理由があります。
それは、西田さん自身が、かつて図に乗って思い上がった人間だったからです。
かつての傲慢ぶりは省略しますが、ともかく誰の言うことも耳に入らないくらい西田さんは思い上がっていました。
やがて自分の思い通りにならない現実が押し寄せてた時、西田さんは、亡き師匠の厳愛のことばを思いだしました。
「おまえのような奴は、生きる価値がない」
「図に乗るな」
「おまえには感謝の気持ちが足りない。
このままではロクな人間にならないぞ」
師の警告がボディブローのように効いてきて、はじめて西田さんは師のありがたさ、師の偉大さに気づきました。
読者に同じテツをふませたくない――。
本書には、西田さんの強い思いがあふれています。
当たり前のことを、当たり前に腑に落ちさせるためにはどうしたら良いのか。
西田さんの工夫を、ぜひご一読ください。