SEの読書術


副題:「本質を読む」力を磨く10の哲学
著者:浅海智晴ほか著 技術評論社編集部編
出版社:技術評論社  2006年2月刊  \1,344(税込)  190P


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また読書術の本を手にした。
レバレッジリーディングだのフォーカス・リーディングだの、一般人に向けた読書本は多いが、本書はSE(コンピュータのシステムエンジニア)という狭い読者層を狙っている。


他の分野も同じかもしれないが、特にIT業界では、次々と生まれてくる新しい技術に追い付いていかなければならない。しかも、慢性的に超過勤務状態にある人が多く、できるだけ少ない時間で効率的に技術を習得することを課せられる。


本書には、10人の優れたエンジニアが登場し、体験に基づいた読書法を教えてくれる。帯に「“何を読む”から“どう読む”“なぜ読む”へ」と書いてある通り、SEの読書法を一段深めてくれるに違いない。


特に印象に残ったアドバイスを紹介しよう。


有限会社オングス代表取締役の後藤大地氏

 本というのは出会いなので、その出会いが少なくなると、将来的に
不利に働くんです。そういう発散と収束のバランスをとらないといけ
なくてですね、発散すると読めないし、収束すると未来的に閉塞感が
くるんですよ。
 そうなると、いかにしていい本だけを読めばいいかという話になり
ます。それで、著名な本、つまり多くの人が「いい」と言っている本
を読むわけです。


本を少ししか読めないときは、名著を読め、ということだ。
読書の楽しみの一つは、自分で本を探して、自分に合った本を見つけることなのだが、時間が限られると、やはり「まず名著」か。


浅海智晴事務所代表の浅海智晴氏

 今流行ってることを今から勉強するっていうことは、宝探しですよ
ね。つまり、投資してもリターンがほとんどないわけです。じゃあ、
これから流行りそうなものをみつけられるかっていうと、たぶんそん
なのわかるわけない。どれが流行るかっていうのは、運だから。
 だから、自分が「こうかな」と思うことをずっとやるのがいいと思
います。「あ、これが流行りそうだからこっち」とかやってると、全
部中途半端になる。


確かに、役に立たない(かもしれない)ことを身につけるのはツライ。やる気が出ない。


富士ゼロックス情報システム(株)の柴田芳樹部長

 一番難しいのは、勉強する習慣がつかないまま中堅になった人です
ね。(中略)
 変えようと思ってても変えられないですね。
 まず、読む習慣をつけてないから、読んでまねるっていうのがなか
なかできない。それに、もともと読む習慣がない人は、買う習慣もな
いわけなので、「本が高い」になっちゃうんですよ。新人が給料安く
て「本が高い」って言うならまだわかるんですけど、中堅に本が高いっ
て言われてもなぁ、と思います。


勉強をする習慣、本を読む習慣を持たない人はどうしようもない、という厳しい指摘だ。


最後は、「技術書だけではダメ」という厳しいお言葉。
自称「武蔵流プログラマ」の山崎敏氏。昨日とりあげた『火事場プロジェクトの法則』の著者でもある。

 技術者である限り、技術書はまず切り離せないと思います。でも、
技術書ばっかり読んでたら、外の世界は見えない。掘り下げてばっ
かりなんでよ。井戸を深く深く掘ってるだけで、井戸の外は見えな
いんです。


そうだ! 技術者も縦書きの本を読め!



この他、技術者の読書ごころを刺激するコメントがあっちにもこっちにも。
これは、SEのための「本を読む本」だ。