チーム脳にスイッチを入れる! 質問会議


副題:なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか?
著者:清宮 普美代  出版社:PHP研究所  2008年10月刊  \1,260(税込)  175P


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「今日の会議では、自発的に意見を言うことを禁止します」と、上司が突然こう言いだしたら、あなたはどう思いますか?


今までの会議のあり方を根本からくつがえしそうな、こんな問いかけで本書はスタートしました。
本書は、「意見を言ってはいけない不思議な会議」の利点とやり方を解説する本なのです。


意見を言っていけなければ、どうやって会議を進めるのか?


「質問会議」という書名が示すとおり、誰かが質問して、それに答える方式で議論を進める。それが、この新しい会議のやり方です。
著者の清宮さんによれば、「アクションラーニング」手法に基づいたこの会議を実行すると、いいことがたくさんあります。
質問力が向上する、傾聴力が増す、共感力の高まりとともにチームワークが良くなる、思考力が上がる、いままでの既成概念を突破するフレーム打破力が着く。


そんなに良いことずくめなんて、なんか怪しいんじゃないの? トヨタ自動車、NEC、富士ゼロックスなどで導入しているっていうのも、セールストークでしょ。
――そう勘ぐってしまうのは、正しい反応でしょう。読みおわった私も、まだ半信半疑です。


ただ、質問会議を導入している企業の管理職が語る「従来の会議との違い」が面白かったので引用しておきます。

 通称の会議に出席すると、その会議のアラが見えてしまう。(中略)
 発言して居ない人、頭をまったく働かせていない人、自分の問題だととらえていない人がたくさんいたり、声の大きい人が一方的に話しているという場面にはよく遭遇します。
 あるいは、活発に意見を戦わせてはいるが、何も決まらず、時間が来たらなんとなく終わってしまうなど、さまざまなことが気になるようになりました。


考えてみれば、今ではすっかり見慣れた「ブレーンストーミング」が登場したときも、常識にどっぷり浸かっている人には衝撃的だったのかもしれません。「自由に意見を出し合う」なんて縦社会にはあり得ませんし、うるさ型の上司が「お互いの意見を批判しない」なんて言われたら憮然としたことでしょう。
「こんな変な会議はけしからん!」と思った頑固オヤジの抵抗を乗りこえて「ブレスト」が定着したように、あと何年かすると「質問会議」も珍しくなくなるかもしれません。


そもそも会議とは何のために開くのか。
本書の内容から離れますが、以前読んだ本に書いてあった究極の会議の目的を思い出したので、最後に紹介させていただきます。
ジョン・K・ガルブレイスは『不確実性の時代』の中で、レーニンロシア革命前に頻繁に同志と会合を重ねたことについて、次のような指摘をしていました。

まじめな会議というものは、情報を交換するために開かれることは少ない。物事を決めるために開かれることはさらに少ない。これらの会議の大部分は、共通の目的を宣言し、出席者に対し、仲間がいることを示して、自信を補強するために開催される。あるいはまた、行動が不可能な場合に、行動計画の机上検討を行なうために開催される。それは、開催されることによって、出席者、さらにしばしば他の者にも、実際には何も起こっていないのに、ないしは起こりえないのに、何かが起こっているような感じを与える効果がある。